お腹にガスが溜まると、お腹が張って不快感があるだけではなく、スカートやズボンのウエストがきつくなったり、腹痛が生じたりして仕事や日常生活にまで影響が及んでしまうことがあります。
溜まったガスをすっきり解消したいところですが、なかにはガスを出したくても出せないとお悩みの方もいることでしょう。
そこで今回はお腹に溜まったガスの解消法を解説します。
お腹にガスが溜まる2つの原因
そもそもなぜお腹にガスが溜まってしまうのでしょうか。
その原因は以下2つのどちらかであることがほとんどです。
- ぜん動運動のはたらきが低下している
- 悪玉菌の数が増えている
それぞれについて詳しくみていきましょう。
ガスが溜まる原因1.ぜん動運動のはたらきが低下している
通常、ガスは腸の「ぜん動運動」によって肛門付近まで運ばれ、体外に排出されます。

ぜん動運動とは、腸が便やガスを肛門まで運ぶために伸びたり縮んだりする動作のことです。
このぜん動運動のはたらきが低下すると、ガスの排出が滞ってしまうため、お腹にガスが溜まってしまいます。
ぜん動運動のはたらきが低下してしまう一因としては「腹筋の衰え」が挙げられるでしょう。
ぜん動運動の主たる動力は、腸のまわりにある平滑筋(へいかつきん)の収縮による刺激です。したがって、ぜん動運動のはたらきが低下しているときは、平滑筋が衰えてしまっている可能性が高いと考えられます。
平滑筋は、自分の意思ではコントロールできない不随意筋であることから、意識的に鍛えることはできません。しかし、お腹まわりの筋肉を鍛えることで、平滑筋を刺激し、結果的にぜん動運動を促進させることができます。
ガスが溜まる原因2.悪玉菌の数が増えている
健康な人の腸内には、善玉菌・悪玉菌・日和見菌と呼ばれる3つの腸内細菌が合計約100〜1,000兆匹存在しています。
その割合が善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7となっていれば腸内環境が正常に保たれていますが、腸内細菌のバランスが崩れ、悪玉菌の数が優勢になってしまうと、腸内で発生するガスの量が増え、腸内環境が乱れてしまいます。
腸内細菌のバランスを正常に保つうえで重要な存在が、もっとも数が多い腸内細菌・日和見菌です。日和見菌はそのときどきで善玉菌と悪玉菌のうち優勢なほうの味方になる菌です。
正常な状態であれば、日和見菌は善玉菌側につきますが、何かのきっかけで悪玉菌が優勢になってしまうと、日和見菌は悪玉菌の味方となり、腸内環境を乱してしまいます。
悪玉菌が増えてしまう背景には、主に以下2つのことがあると考えられるでしょう。
- 肉類などたんぱく質の食品を摂りすぎている
- ストレスが溜まっている
悪玉菌はたんぱく質を栄養にしているため、たんぱく質を摂りすぎると悪玉菌が増えやすくなってしまいます。また、ストレス状態にあるときも悪玉菌が増えやすくなる傾向にあります。
お腹に溜まったガスを解消する4つの方法
お腹に溜まったガスを解消するためには腸やそのまわりの筋肉に刺激を与えて、ぜん動運動を促進させ、ガスの排出を促すことが重要です。
以下に「ガスが溜まってお腹がパンパンになっている」というときにおすすめの解消法を4つ列挙しました。マッサージ、ツボ押し、ストレッチ、ヨガの4種類を紹介しますので、好みのものを選んで実践してみましょう。
「のの字」マッサージ|会社のトイレでも簡単にできる
最初に紹介するのは「のの字」マッサージです。トイレに入ったときに簡単にできるので覚えておくと便利です。
のの字マッサージは、文字通りお腹にひらがなの「の」を書くマッサージです。あまり力を入れずに、手のひら全体を使って優しく撫でるようにマッサージしましょう。 次に紹介するのはお通じをよくする「便秘点」と呼ばれるツボです。 背中に2箇所あり、指先を前にしてウエストに両手をおいたときにちょうど親指が当たるところが便秘点の場所です。 気がついたタイミングで手で押すのもいいですし、以下で紹介するように自分の体重を使ってツボを刺激するのも効果的です。お通じをよくするツボ・「便秘点」|押すだけで簡単にできる
- 指先を前にして両手を腰に当てます。その状態で、腰を左右にひねりながら、親指に力を入れて背中にある「便秘点」を刺激します。10回おこなってください。
- 両膝を立てて、仰向けになります。
- 背中の下で拳を作ります。拳は背骨から指2本分離れた場所に置きましょう。体を右側に倒して拳に体重をかけて、3秒キープします。終わったら、体を左に倒して同じように3秒キープしてください。
うつ伏せストレッチ|お腹の筋肉を伸ばしてぜん動運動を活性化させる
さらに、ぜん動運動を活性化させるストレッチを紹介します。
- うつ伏せになります。このとき、床に手をついて顔をあげてください。
- 腕立てをするようにして、上半身を持ち上げてください。お腹の筋肉が伸びているのを感じながら、10秒から20秒キープします。そのあと、元の姿勢に戻ります。
- 2の動作を3回繰り返してください。
お腹の調子をよくするヨガのポーズ|ベッドの上で簡単にできる
最後はガス抜きに効くヨガのポーズを紹介します。ベッドの上でできますので朝ベッドから起き上がる前に取り組むことを習慣にするとよいでしょう。
- 仰向けになります。
- 右膝を胸のほうに引き寄せて、両手で抱え込みます。このとき、顎を軽く引いて息を吐きましょう。この姿勢で5秒間キープします。右膝を元に戻したら、左膝も同様に持ち上げましょう。
- 両膝を胸のほうに引き寄せて、両手で抱え込みます。この姿勢で5秒間キープしましょう。
- そのままの状態で、お腹とお尻を揺らすように体を左右に揺らします。
お腹にガスが溜まらないように予防する方法
ここでは、お腹にガスが溜まってしまうのを予防する方法を紹介します。
ガスが溜まるのを予防するためには、「お腹の筋肉を鍛えてぜん動運動を活性化させること」と「植物性乳酸菌を摂って腸内環境を整えること」が大切です。
予防法1.腹筋を鍛える
ぜん動運動を活性化させるためには腹筋鍛えるのが効果的です。
- 継続すること
- 正しいフォームでおこなうこと
1つ目は「継続すること」です。
筋トレを1日2日で効果が出る訳ではないので習慣化することが大切です。「テレビのCM中に筋トレをする」「寝る前に◯回する」など、日常生活のなかに上手く取り入れましょう。
2つ目は「正しいフォームでおこなうこと」。
筋トレをするときは回数よりも正しいフォームを維持できたかどうかを重要視してください。誤ったフォームでやみくもに回数を重ねても、期待する効果は得られない可能性が高いでしょう。
また、フォームを確認できるように鏡の前で筋トレするのもおすすめです。
具体的な腹筋運動については「便秘の改善方法|大切なのは運動と規則正しい食事を習慣化させること」にて詳しく解説をしておりますのでポイントを踏まえながら挑戦してみましょう。
予防法2.植物性乳酸菌を摂取する

腸内で悪玉菌が増えることを防ぐためには、善玉菌の数を優勢に保つ必要があります。そこで助けになるのが乳酸菌です。乳酸菌には善玉菌の数を優勢にして、腸内環境を整えるはたらきがあります。
乳酸菌が多く含まれる食品といえば、ヨーグルトやチーズなどの乳製品を思い浮かべる方も多いのはないでしょうか?しかし、ヨーグルトやチーズなどの動物性乳酸菌は胃液によってほとんど死滅してしまいます。
一方で、生きて腸まで届くのは納豆や味噌、醤油、ぬか漬けなど発酵食品に多く含まれる植物性乳酸菌です。
味噌汁と納豆の組み合わせは、日本の朝の定番食ともいえる存在ですが、腸内環境を整えるためには有効なメニューです。
予防法3.栄養バランスの整った食事を摂る
上でも説明しましたが、悪玉菌が増えてしまう原因の1つとして「肉類などたんぱく質を多く含む食品を摂りすぎていること」が挙げられます。
加えて、悪玉菌がガスを発生させるのは、食物繊維や高たんぱく・高脂肪食品を分解するときです。
「食物繊維は便秘の解消によい」というイメージから、ガスに悩まされたときも食物繊維を摂ろうと考える方は多いかもしれませんが、ガスが溜まっているときは食物繊維の摂りすぎには注意しましょう。
食物繊維はもちろん、たんぱく質も脂質も人間にとっては必要な栄養素です。しかし、あくまでも「適度な量」を守ることが大切です。悪玉菌の数やガスの発生量が過剰に増えることを防ぐためにも、食事の栄養バランスが偏らないように注意してください。
栄養バランスの整った食事の摂り方については、「ダイエット中の栄養管理の方法|「食事バランスガイド」を解説」をご覧ください。厚労省と農水省が共同で策定した「食事バランスガイド」を参考に、1日の食事で「何を」「どれだけ」食べればよいのかイラストつきでわかりやすく解説しています。
ガス溜まりの解消と予防には運動と食事の見直しが大切
ここまで紹介してきたように、お腹に溜まったガスを解消したり、溜まらないように予防したりするためには、「運動をしてお腹の筋肉を動かすこと」と「食事を見直して腸内環境を整えること」が大切です。
- 「のの字マッサージ」をトイレに入った度に実践する
- 腹筋を鍛える筋トレを毎日する
- 毎朝の朝食のメニューに納豆とお味噌汁を入れる
日常生活でガスを溜めない生活習慣を心がけてみましょう。
- 三浦於菟『気・血・水」の流れが健康をつくる: 「漢方の原則」で病気知らずに! 』
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- 坂井正宙『図解入門よくわかる便秘と腸の基本としくみ 』
- 大竹真一郎『腸内環境を整えるいきいき食事法 著者』