ディップスは、「スタンド」という器具に掴まったり、ベンチに手をついたりして、ヒジを曲げ伸ばすことで体を上げ下ろしするトレーニングで、主に鍛えられるのは胸や腕の筋肉です。
全身の体重を胸や腕の筋肉で支えなければいけないディップスはとても高負荷であるため、上級者向けのトレーニングと言えます。ただし、ベンチを使った初心者向けのやり方もあります。
今回はディップスの正しい実践方法を紹介します。また併せて、ディップスをしている方によくある「肩が痛くなる」という悩みを防ぐポイントもお伝えしましょう。
目次
ディップスで鍛えられる筋肉と効果
ディップスは主に「大胸筋」と「上腕三頭筋」を鍛えるトレーニングです。まずはそれぞれの筋肉について説明していきます。
大胸筋
大胸筋は胸を覆うようについている筋肉で、主に「腕を体の前に押し出す」動作で使われます。
大胸筋はとても体積の大きな筋肉です。トレーニングするときも「大胸筋上部」「大胸筋中部」「大胸筋下部」をそれぞれ鍛え分ける必要がありますが、ディップスでは主に「大胸筋下部」を鍛えられます。
大胸筋を鍛えることで、男性なら「胸板を厚くできる」、女性なら「胸が引き上げられてバストアップする」などの効果が期待できます。
上腕三頭筋
上腕三頭筋は、手のひらを上に向けたときに二の腕の下側についている筋肉で、主に「ヒジを伸ばす」時に使われます。上腕三頭筋を鍛えることで、男性なら「腕が太くなる」、女性なら「二の腕のたるみを改善できる」などの効果が期待できます。
ディップスで鍛えることで得られるメリット
冒頭でも述べましたが、ディップスは、上級者向けのトレーニングであり、その分、ディップスをすることで様々なメリットが得られます。
1つ目のメリットは「大胸筋の形が良くなる」こと。ディップスは大胸筋の下部に効果のあるトレーニングです。大胸筋の下部を鍛えることで、大胸筋の形がくっきりと表れるようになり、大胸筋の見栄えが良くなります。見た目のかっこいい体になりたい場合は、ディップスで大胸筋下部を鍛えることをおすすめします。
2つ目のメリットは「広い可動域でトレーニングができる」ことです。ディップスの動きは可動域が広いため、大胸筋にストレッチを効かせられます。そのため、柔軟性の向上や肩関節の可動域の向上が期待でき、今後のトレーニング効率が上がります。
しかし、この記事の後半でも紹介しますが、ディップスは可動域が広い分、肩を痛めやすいトレーニングでもあります。ディップスをする際は怪我に注意してトレーニングをしてください。
3つ目のメリットは「実用的な筋肉がつく」ことです。ディップスは宙に浮いた状態で、バランスを取りながらトレーニングをします。そのため、体幹の筋肉や肩周りのインナーマッスルを鍛えられ、より実践的な筋肉をつけられます。
ディップスの注意点とポイント
ここからはディップスのやり方を「自重編」とウエイトを利用する「加重編」に分けて紹介していきます。自重のディップスと加重のディップスの動作は基本的に同じですが、当然のごとくウエイトを利用する分、加重の方が難易度が高くなります。
とはいえ、自重のディップスも難易度が相当高いトレーニングであるため、初めて行う場合はジムのトレーナーやパーソナルトレーナーの指導の下で実践するようにしてください。
また、ディップスのやり方はメインのターゲットを「大胸筋」と「上腕三頭筋」のどちらにするかによって異なります。上で紹介しましたが、大胸筋を狙う時は「脇を開く」ように意識し、一方で上腕三頭筋を狙う時は「脇を閉じる」ようにしましょう。
【自重編】ディップスのやり方
では、まずは「自重編」からみていきましょう。
種類 | メインで効く部位 |
【大胸筋狙い】スタンディング・ディップス | 大胸筋下部 |
【上腕三頭筋狙い】スタンディング・ディップス | 上腕三頭筋 |
【上腕三頭筋狙い】ベンチ・ディップス |
なお、トレーニングの難易度を☆の数で5段階評価します。☆の数が多いほどトレーニングの難易度が上がります。
【大胸筋狙い】スタンディング・ディップス(☆☆☆☆)
最初に、大胸筋をメインのターゲットにして、トレーニング用の「スタンド」という器具を利用して自重で行うディップスのやり方を紹介します。
※1分30秒〜は上腕三頭筋に効くディップスが実演されています。
【大胸筋狙い】スタンディング・ディップスのポイントは2つあります。
1つ目は「体を前傾させる」ことです。体を前に傾けることで、大胸筋の下部を効果的に鍛えることができます。体を前傾させずに脇を締めてしまうと、上腕三頭筋の方に効いてしまいます。
2つ目は「ヒザを曲げる」ことです。ヒザを曲げることによって、自然に前傾姿勢をとりやすくなります。
◆回数の目安:10回
【上腕三頭筋狙い】スタンディング・ディップス(☆☆☆)
次に、上腕三頭筋をメインのターゲットにして行うディップスのやり方を紹介します。上腕三頭筋を鍛える自重のディップスには「スタンド」を使うやり方と「ベンチ」を使うやり方の2種類がありますが、まずはスタンディング・ディップスから説明します。
上腕三頭筋狙いのスタンディング・ディップスのポイントは2つあります。
1つ目は「脇を締める」ことです。大胸筋を鍛えるディップスでは「脇を開く」のに対して、上腕三頭筋を鍛えたい場合は「脇をしっかりと締める」ことが重要です。トレーニング中は常に脇を締める意識を持ちましょう。
2つ目は「ヒジを伸ばしきらない」ことです。上腕三頭筋は「ヒジを伸ばす」動作で使われる筋肉のため、ヒジを伸ばそうと意識することは大切ですが、ヒジを完全に伸ばしきってしまうと、筋肉の緊張状態が緩みやすくなります。
完全に伸ばしきった状態を100とすると「80%程度伸ばした」くらいのところで止めて、再びヒジを曲げていくのが理想です。
◆回数の目安:10回
【上腕三頭筋狙い】ベンチ・ディップス(☆☆)
ベンチ・ディップスは、今回紹介するディップスの種類の中では最も初心者向きでしょう。というのも、ベンチ・ディップスは足を地面につけた状態でトレーニングするため、スタンディング・ディップスよりも負荷を軽くできるからです。
ベンチ・ディップスのポイントは2つあります。
1つ目は「上半身を動かさない」ことです。上腕三頭筋を効果的に鍛えるために、肩の筋肉の力や、反動の力が使われるのをなるべく抑える必要があります。上半身が安定しないと、意図せぬ筋肉が使われやすいため、注意しましょう。
2つ目は「ヒジを曲げる角度は90度にする」ことです。90度以上曲げてしまうと、負荷が逃げやすくなります。
◆回数の目安:10回
【加重編】ディップスのやり方
自重のディップスも相当難易度が高いですが、それでも物足りない!という方向けにウエイトを付けて行うディップスのやり方を紹介します。
種類 | メインで効く部位 |
【大胸筋狙い】ウエイト付きスタンディング・ディップス | 大胸筋下部 |
【上腕三頭筋狙い】ウエイト付きスタンディング・ディップス |
上腕三頭筋 |
ウエイトは、「ディップスベルト」などの名称で売られているトレーニング用のベルトを装着し、そこに吊します。
以下で引用する動画では数十キロのウエイトを使用していますが、2〜5kg程度のウエイトでも十分に効果があります。無理をせず、まずは数キロのウエイトから始めましょう。
【大胸筋狙い】ウエイト付きスタンディング・ディップス(☆☆☆☆☆)
大胸筋をメインに鍛えるウエイト付きスタンディング・ディップスを紹介します。
【大胸筋狙い】ウエイト付きディップスのポイントは2つあります。
1つ目は「体を前傾させる」ことです。自重のディップスと同様に、ヒザを曲げて体を前傾させることで、大胸筋下部に刺激を与えることができます。
2つ目は「脇を開く」ことです。高重量のウエイトを扱うと、無意識のうちに脇を閉じてしまいやすいため、自重の時よりも一層強く「脇を開く」ことを意識しましょう。
◆回数の目安:5回
【上腕三頭筋狙い】ウエイト付きスタンディング・ディップス(☆☆☆☆☆)
最後に上腕三頭筋を鍛えるウエイト付きスタンディング・ディップスのやり方を紹介します。
【上腕三頭筋狙い】ウエイト付きディップスのポイントは2つあります。
1つ目は「脇を閉じる」ことです。繰り返しになりますが、脇を閉じることで上腕三頭筋を効果的に鍛えられます。
2つ目は「ヒジの位置を固定し、かつ肩をすくめない」ことです。ヒジの位置が動いたり、肩がすくんでしまうと、肩や背中の筋肉が使われやすくなってしまうため、注意しましょう。
◆回数の目安:5回
ディップスで「肩を痛めない」ためのポイント
ディップスをしている方によくある悩みの1つが「肩を痛めてしまった」ということです。
本来であればディップスは胸あるいは腕の筋肉に一番負荷がかかるトレーニングのため、「肩が痛くなる」方はフォームが間違っている可能性が非常に高いと考えられます。おそらく、「肩がすくんでいる」ことが原因で肩に負担がかかっているのでしょう。
「肩を痛めない」ポイントとしては、「肩の力を抜く」こと。肩に力が入ると肩がすくんでしまいます。肩の力を抜いて、肩を下げる意識でトレーニングをすれば肩への負担は軽減します。
まとめ
今回はディップスについて紹介しました。

また、ディップスで効果的に鍛えられるのは「大胸筋下部」です。大胸筋全体を鍛えるのであれば、大胸筋の上部や中部に効かせられる他のトレーニング種目を行う必要があります。
「他にも大胸筋を鍛えるトレーニングを知りたい!」という方は、以下の記事も併せてご覧ください。
ディップスを行う上で押さえておきたいポイント