「トライセプスエクステンション(英語で“ Triceps Extension” )」の「トライセプス」は「上腕三頭筋」を、「エクステンション」は「伸ばす」を意味します。つまり、トライセプスエクステンションは上腕三頭筋を伸ばして鍛えるトレーニングです。
トレーニングの動作自体はシンプルですが、注意点を押さえておかなければ、上腕三頭筋に効かなかったり、肘を痛めてしまったりする恐れがあります。
トレーニングを効果的に、安全におこなうためには、正しいフォームを身につける必要がありますので、今回はトライセプスエクステンションの正しいやり方を紹介します。
目次
トライセプスエクステンションで鍛えられる筋肉と効果
トライセプスエクステンションで鍛えられる筋肉は「上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)」です。
上腕三頭筋は二の腕を構成する筋肉の1つです。二の腕を構成するのは上腕二頭筋と上腕三頭筋の2つの筋肉ですが、手のひらを上に向けてみたときに下についているのが上腕三頭筋です。
上腕三頭筋は肩甲骨のあたりから肘まで伸びています。二の腕の筋肉というと、力こぶを作る二頭筋のほうが目につきやすいですが、実際は上腕三頭筋が二の腕の筋肉の7割を占めています。
上腕三頭筋は「肘を伸ばすとき」に使われる筋肉です。ですので、トライセプスエクステンションにおいても「肘をしっかりと伸ばしきる」ことで効果的に鍛えることができます。
上腕三頭筋を鍛える効果としては「二の腕の引き締め」が挙げられます。というのも、上で説明したように、上腕三頭筋は二の腕を下から支えるようにしてついていることから、上腕三頭筋を鍛えることでタプタプとした二の腕のたるみが改善されるのです。
【自重編】トライセプスエクステンションの種類
ここからはトライセプスエクステンションのやり方を紹介します。
トライセプスエクステンションには多くの種類があり、自重でできるものもあれば、ダンベルやジムにあるマシンを使うものもあります。
以下では「自重編」と「器具編」の2つに分けて紹介しますが、まずは「自重」からみていきましょう。
種類 | 効く部位 |
ヒザつきトライセプスエクステンション | 上腕三頭筋 |
トライセプスエクステンション |
トライセプスエクステンションをするときは上腕三頭筋に負荷がかかっているかどうかを常に意識してください。上腕三頭筋は日常生活において使われる頻度が少ない筋肉ですので、「効いている」感覚を掴めるようになるまで苦労するかもしれません。
トレーニングを始める前に、先ほど紹介したやり方で手のひらを上に向けて上腕三頭筋の位置を実際に手で触って確かめておくとよいでしょう。
また、トレーニングの難易度を☆の数で5段階評価しています。☆の数が多いほどトレーニングの難易度が高くなります。
ヒザつきトライセプスエクステンション(☆)
最初に紹介する自重のトライセプスエクステンションはヒザをついておこないます。
このトレーニングは負荷がとても軽いのが特徴です。したがって、メインで取り組むトレーニングというよりも、あくまでもトライセプスエクステンションのコツや上腕三頭筋が使われている感覚を知るために、導入のトレーニングとして実践するのがおすすめです。
ヒザをついてトライセプスエクステンションをするときは以下の2つのポイントに注意しましょう。
1つ目のポイントは「椅子をしっかりと固定する」こと。
このトレーニングでは椅子を使います。椅子が倒れると非常に危険ですので、動画のやり方のように椅子を壁にくっつけるなどしてしっかりと固定してください。
また、持ち手の位置が高くなるほど、体と地面との角度が大きくなるため、体重がかかりにくくなります。
2つ目のポイントは「肘を伸ばすときに反動の力に頼らない」こと。
肘を曲げて、伸ばすときに勢いで力任せになってしまうのはよくある間違いです。
勢いで動かしてしまうと、肩の筋肉が使われてしまい、上腕三頭筋にはほとんど効かないといっても過言ではありません。反動の力に頼ることなく、ゆっくりと動作をおこなうことを心がけてください。
また、反動の力で起き上がってしまうと、上腕三頭筋から肘に負荷が逃げてしまうため、ヒザを痛める危険性があります。
- 椅子の前にヒザをついて座ります。
- 椅子の持ちやすいところを掴み、肘を曲げて体を前に倒します。
- 息を大きく吸い込みます。
- 息をゆっくり吐きながら肘を伸ばして起き上がります。
- 最大限起き上がったら息を吸いながらゆっくり戻りましょう。
◆回数の目安:10〜15回
トライセプスエクステンション(☆☆)
次に紹介するのはヒザをつかずにおこなうトライセプスエクステンションのやり方です。
このトレーニングのポイントは「肘をしっかりと伸ばす」こと。
これは以下で紹介するすべてのトライセプスエクステンションに共通していえるポイントです。すでに説明した通り、上腕三頭筋は肘を伸ばすとき働きます。1回1回、肘をしっかりと伸ばしきることを意識しましょう。
- 椅子の持ちやすいところを持ちます。
- 体をできるだけまっすぐにして椅子の方向に体を傾けます。
- 肘を曲げて体を前に倒します。
- 息を大きく吸い込みます。
- 息をゆっくり吐きながら肘を伸ばして起き上がります。
- 最大限起き上がったら息を吸いながらゆっくり戻りましょう。
◆回数の目安:10〜15回
【器具編】トライセプスエクステンションの種類
自重のトライセプスエクステンションは負荷を適切な大きさに調節できないという不自由さがありますが、ダンベルやマシンなどの器具を利用することでその自由度が高まります。
種類 | 効く部位 |
ライイング・トライセプスエクステンション(ダンベル) | 上腕三頭筋 |
ライイング・トライセプスエクステンション(バーベル) | |
ケープル・トライセプスエクステンション |
ライイング・トライセプスエクステンション(ダンベル)(☆☆☆☆)
ライイング・トライセプスエクステンションの「ライイング」には英語で「横になる」という意味があります。名称から分かるように、ライイング・トライセプスエクステンションはベンチの上に寝転がっておこなうトレーニングです。
この記事では2種類のライイング・トライセプスエクステンションを取り上げますが、まずは「ダンベル」を使うやり方を紹介します。このやり方では、肘の曲げ伸ばしをする際のダンベルの向きにポイントがあります。
まず、肘を曲げて腕を下ろすときはダンベルを縦(小指を天井に向ける)にしましょう。
スタートの時点では、バーベルを握るときのように体の上で肘を伸ばしてダンベルを横に構えます。その状態から、肘を曲げて腕を下ろすときは小指が天井と向き合うようにダンベルを縦に立ててください。
横にして下ろすと肘が横に開いて上腕三頭筋に負荷がかかりにくいですが、縦にして下ろすことで上腕三頭筋にしっかりと効きます。ダンベルが顔の横のあたりにくるようにまっすぐ下ろしましょう。
そして、肘を伸ばして腕を上げるときはダンベルを横(親指を内側に向ける)にします。
肘を伸ばしながらダンベルを横にするのではなく、肘が伸びきったところで手首をひねってダンベルを横にするのがポイントです。
◆回数の目安:10〜15回
ライイング・トライセプスエクステンション(バーベル)(☆☆☆☆)
次は「バーベル」を使うライイング・トライセプスエクステンションを紹介します。
これまでのトレーニングと比べると負荷がかなり大きくなりますので注意が必要です。今から紹介する3つのポイントをしっかり押さえておきましょう。
1つ目のポイントは「バーベルのバーは手のひらの真ん中にのせる」こと。
バーを落とすと大怪我につながりますので、手のひらの真ん中に乗せて、しっかりと安定させてください。
2つ目のポイントは「親指を添えてかぶせるように握る」こと。
落下のリスクを取り除くために、5本指を使ってしっかりと握りましょう。

3つ目のポイントは「バーを上げるときは一直線を描くように真上に上げる」こと。
弧を描くように上げるとふらついてバーを落とす危険性がありますので、まっすぐ上げるようにしましょう。
◆回数の目安:10〜15回
また、初心者の方であればバーベルの重さをどのくらいに設定すればよいのか迷うこともあるでしょう。その場合は、ジムのインストラクターやパーソナルトレーナーに相談して決めるのがおすすめです。
ケーブル・トライセプスエクステンション(☆☆☆)
最後にケーブルマシンを使うトライセプスエクステンションのやり方を紹介します。
1つ目のポイントは「片足を前に出す」こと。
片足を前に出すことで体勢が安定し、上腕三頭筋にしっかり効かせられます。ケーブルを使うとウエイトの重さで体が後ろに引っ張られてふらつきやすいため、片足を前に出して体勢を安定させることが重要です。
2つ目のポイントは「二の腕を固定する」こと。
二の腕を固定すれば、動くのは肘から手首のみになり、肩周りの筋肉ではなく、上腕三頭筋の力によって肘の曲げ伸ばしがおこなわれます。
また、二の腕を固定しないと肘を曲げるときに反動の力が働きやすくなるため、上腕三頭筋にかかる負荷が小さくなる可能性もあります。
上腕三頭筋にしっかりと効かせるためには二の腕を固定することが欠かせません。
◆回数の目安:10〜15回
トライセプスエクステンションの注意点
トライセプスエクステンションの注意点は2つあります。
1つ目の注意点は「肘の位置で鍛える筋肉が変わる」こと。
トライセプスエクステンションで鍛えられる上腕三頭筋には「長頭」と「短頭」の2種類があります。
肘が耳に近い位置(肩が上がっている状態)でトライセプスエクステンションをすると「長頭」が、肘が体の前(肩が下がっている状態)だと「短頭」が、それぞれ鍛えやすくなります。
今回紹介した筋トレの場合、自重のトライセプスエクステンション、ケーブル・トライセプスエクステンションが長頭を、ライイングエクステンションでは短頭を主にトレーニングできます。
自分の鍛えたい部位に合わせて、トレーニングを使い分けてみてください。
2つ目の注意点は「肘の位置を固定する」こと
トライセプスエクステンションは、肘の曲げ伸ばしがメインの動きであるため、肘の位置が動いてしまうと、トレーニング効果が下がります。
トライセプスエクステンションでは、肘をできるだけ固定して、肘を起点に動かすようにしてください。
まとめ
今回はトライセプスエクステンションのやり方を紹介しました。
トライセプスエクステンションで鍛えられる筋肉 | ポイント |
上腕三頭筋 | 肘をしっかり伸ばすこと |
トライセプスエクステンションは上腕三頭筋を鍛えるのに非常に効果的なトレーニングです。
しかし、ポイントを押さえていないと肘を痛めてしまう可能性があります。トライセプスエクステンションにおいて「肘が痛くなってしまった」というのはよくある悩みです。
怪我を未然に防ぐためにも、正しいフォームで適切な量を調整しながら取り組んでいきましょう。
【豆知識】バーベルの握り方には2種類ある!
親指以外の4本の指だけでバーを握る方法です。握力に頼ることなくバーを上げ下げできることからトレーニングの効果を高められますが、不安定になるので初心者は控えるのが無難です。
しっかりと5本指でバーを握る方法です。握力の力が加わってしまうため、サムレスグリップに比べるとトレーニングの効果は少し薄まりますが、安全性は高いです。