ダイエットには野菜がおすすめの理由と適切な摂取量を解説

監修者プロフィール

工藤孝文|医師

工藤孝文|医師

福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。帰国後、大学病院、地域の基幹病院を経て、現在は、福岡県みやま市の工藤内科で地域医療を行っている。ダイエット外来を行う医師として、多くのテレビ番組に出演したり、雑誌などの媒体で執筆活動を行なっている。

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野菜はダイエットに欠かせない食材の1つです。

しかし、具体的に野菜を食べることでどんなダイエット効果があるかということや、どの野菜をどのくらい食べれば良いのかわからないという方もいるのではないでしょうか。

そこで、この記事では、野菜がダイエットにもたらす効果や摂取目安量をお伝えします

ダイエット中に野菜を食べることで得られる効果

ダイエット中に野菜を食べることで得られる効果はたくさんありますが、ここでは代表的なものを3つご紹介します。

ダイエット中に野菜を食べることがおすすめな理由

  • 便秘解消につながる
  • 糖質の吸収を穏やかにする
  • 満腹感を得やすく食べ過ぎを防げる

野菜の効果1.便秘解消につながる

まず挙げられる利点として「便秘解消」効果があります。

多くの野菜に含まれる食物繊維には腸内環境を整える働きがあります。腸内環境が整っていない、つまり乱れている状況というのは、腸内細菌の「悪玉菌」が「善玉菌」より多くなってしまう現象のこと。そして、この逆転現象が起こってしまう理由の1つに、「食物繊維の不足」があるとされています。

また、食物繊維は、腸内で水分を吸収することで膨らみ、便のカサを増すという働きもあります。便のカサが増すことで、便を肛門へと運ぶ腸の働きである「ぜん動運動」が活発になり、排便が促されます。

これらのことから、食物繊維を摂取することで便秘の解消・予防効果が期待できるのです。

特にダイエット中は普段と食事内容が変わったり、食事量が少なくなったりと腸内環境が変化しやすい期間とも言えます。しっかりと野菜を食べて食物繊維を摂取しましょう。

野菜の効果2.糖質の吸収を穏やかにする

こちらも食物繊維の働きによるもので、糖質の吸収を穏やかにすることで糖が脂肪に変わるのを防ぐ効果が期待できます。

そもそも糖質が太る原因になると言われるのは、血糖値の上昇をもたらすからです。

血糖値の上昇と肥満の関連性

血糖値が上昇すると、平常値に戻そうとインスリンというホルモンが分泌されます。このインスリンには余った糖を脂肪へ変えて蓄える働きもあるため、血糖値が急上昇したり、血糖値が頻繁に上がったりすれば、それだけ糖が脂肪へと変えられるリスクが高まります。

食物繊維は消化しにくい栄養素で、糖質よりも先に野菜などから摂取しておくことで糖質の吸収がゆっくりになります。すると、血糖値の上昇もゆるやかになるため、インスリンが過剰に分泌されることを防げると考えられます。

そのため、同じ糖質を含む食品を食べるにしても、いきなり糖質を摂取するのと、先に食物繊維を摂取するのでは血糖値の上昇の仕方に違いが出ます。

血糖値が急激に上昇してインスリンが過剰に分泌されないように、食物繊維→糖質の順番で摂取することがおすすめです。

野菜の効果3.満腹感を得やすく食べ過ぎを防げる

野菜は低カロリーでありながら、「カサ」が多く、消化に時間がかかることから満腹感を得やすい食材です。

ダイエットの基本は摂取カロリーよりも多くのカロリーを消費することにあります。そのため、少しでもカロリーを抑えようと思えば、カサが多く、消化に時間がかかる野菜はぴったりだと言えるでしょう。

野菜を多く食べるよう意識すれば、空腹感を抑えられて食事量を制限しやすくなります。

ただし、ジャガイモや長芋などの芋類や、レンコンなどの根菜類は糖質が多い傾向にあるため、食べ過ぎないよう注意が必要です。

ダイエット中に野菜サラダはどれくらい食べるべきか

カロリーが低いだけではなく、便秘解消や糖質の吸収を穏やかにする効果もある野菜はダイエットの強い味方です。しかし、ダイエット中は特に食事制限などを自己流で行うと、意図せず野菜が不足したり、栄養バランスが崩れたりすることもあります。

野菜をどの程度摂取すべきかを抑えておき、野菜が不足しないよう注意しましょう。

厚生労働省が健康維持のために掲げている1日の野菜摂取量の目標値は「1日350g以上、そのうち緑黄色野菜を120g以上」です。

つまり、緑黄色野菜120g、淡色野菜230gが目標ということになります。

緑黄色野菜・淡色野菜とは

緑黄色野菜、淡色野菜はカロテンが含まれる量によって分類されています。一番簡単な見分け方としては、色の濃淡による区別が挙げられます。一概には言えませんが、色の濃い野菜が緑黄色野菜・薄い野菜が淡色野菜というイメージです。

緑黄色野菜の代表的なものとしては、カボチャ、ニンジン、トマト、ホウレン草、ピーマンなどが挙げられます。これらの野菜にはカロテン、ビタミンA、ミネラルなどが豊富に含まれています。

一方、淡色野菜はキュウリやキャベツ、レタスなどが代表的です。こちらは緑黄色野菜と比べると、摂取できる栄養素が少ないのが特徴です。

サラダなどで野菜を食べる時は、緑黄色野菜120g・淡色野菜230gを目安として、淡色野菜の方を多めに摂るよう意識するといいでしょう。

ただし、サラダの場合はドレッシングに注意が必要です。一般的なドレッシングは油分が多いため、ダイエットには不向きです。シンプルな調味料やかつお節で代用しましょう。

かつお節には食欲を抑えたりイライラを防止したりする働きがあるため、特に食事制限を行っている方におすすめです。

ダイエットにおける食物繊維の摂取量目安

ダイエットに役立つ食物繊維ですが、その摂取量の目安は厚生労働省発表の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」で以下のように定めてられています。

食物繊維の摂取目安

  • 成人男性:1日に20g以上
  • 成人女性:1日に18g以上

また、食物繊維は2種類あり、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」に分けられます。どちらか一方だけに偏るよりも、両方をバランスよく摂取するのが理想です。

以下が、2つの食物繊維の違いと含まれる主な食材です。両方をバランス良く摂取するように心がけましょう。

「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の違い

  • 水溶性食物繊維:舌触りがネバネバ・ヌルヌルしているのが特徴で、こんにゃく、アボカド、ワカメなど、繊維が柔らかい野菜や果物、海藻類に多く含まれています。血糖値の上昇を抑制する作用や、整腸効果などがあります。
  • 不溶性食物繊維:糸状の繊維質で舌触りがザラザラしているのが特徴で、穀類や繊維の硬い野菜、根菜、キノコや豆類などに多く含まれています。便通を良くする働きや、有害物質の吸着・排泄を促す作用などがあります。

野菜を食べ過ぎると下痢・便秘になるケースもある

便秘の改善などの効果がある食物繊維ですが、過剰に摂り過ぎることで逆に下痢や便秘を引き起こすこともあります。過剰摂取にならないよう、適切な範囲に収めるようにしましょう。特にサプリメントで食物繊維を補う場合は要注意です。

食物繊維の摂り過ぎが下痢を起こす理由

食物繊維で便をカサ増しすることで、腸のぜん動運動が促進され、便通を促すとご説明しましたが、食物繊維の摂取量が過剰になることで腸のぜん動運動も過剰になってしまうことが考えられます。

排便を促すためのぜん動運動ですが、これが過剰になると便が大腸に留まる時間が少なくなってしまいます。すると、大腸での水分吸収が十分に行われないまま排便されてしまうことにつながるのです。

つまり水分を多く含んだまま排便される下痢になります。下痢になると、本来であれば吸収されるはずだった栄養素まで排泄されてしまうため、栄養不良や疲労感、体力の消耗などにもつながります。

特にダイエットに必要な栄養素が十分に吸収されずに排出されることは、大きなデメリットだと言えるでしょう。

特に下痢を起こしやすい人は、食物繊維を過剰に摂り過ぎないよう注意してください。

食物繊維の摂り過ぎが便秘を起こす理由

便秘を改善してくれる食物繊維ですが、摂り過ぎることで便秘を起こすこともあります。

前述したように、食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類が存在します。このうち、不溶性食物繊維を摂り過ぎることで、便秘につながる、もしくは悪化することが考えられるのです。

不溶性食物繊維は、腸内で水分を吸収して膨らみ、カサを増すことでぜん動運動を刺激します。通常であればこの作用で便秘が改善されることが期待できるのですが、摂り過ぎると便を硬くしてしまい便秘につながる可能性があります。

同じ食物繊維でも、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維では働きが異なるため、偏らずにどちらもバランス良く摂取してください。

ダイエット中の野菜はトマトがおすすめ

トマトには前述した食物繊維だけではなく、トマトの赤い色素である「リコピン」が多く含まれるため、ダイエットに効果的な食材の1つです。

冒頭で述べたように、血糖値の急激な上昇などでインスリンが過剰に分泌されれば、糖が脂肪として蓄えられてしまう可能性が高まります。しかし、トマトに豊富に含まれるリコピンには、血糖値を上げにくくする働きがあります。

そのため、食事の最初にトマトを食べることで、血糖値が上がりにくくなります。

また、リコピンは油に溶けやすい性質があるため、油と一緒に摂取すると吸収しやすく、サラダにする際はオリーブオイルと合わせるカプレーゼがおすすめです。

トマトはスープやジュースで朝に摂ると効果的

サラダなど生でトマトを摂取するよりも、トマトジュースやミネストローネなどのスープでの摂取がおすすめです。

というのも、リコピンもクエン酸もどちらも熱に強いため、加熱しても問題なく摂取できます。そのため、生よりも一度に多くのトマトを使うスープなどの方が、それだけ多くの栄養素を摂取することができるのです。

また、植物には硬い細胞壁があるため、生のままよりも加熱したりペースト状にしたりする方が、トマトの細胞が破壊されてリコピンが吸収されやすくなります。

さらに、摂取する時間帯としては朝がおすすめです。カゴメが行った実験では、朝・昼・晩のうち朝にトマトジュースを飲むと最もリコピンの吸収率が良いという結果が出ています。

他の時間帯でもかまいませんが、できれば朝にトマトを摂取するよう心がけるとより効果が得やすいと考えられます。

ダイエットにおすすめの野菜

ダイエット時におすすめのトマトですが、それ以外にもおすすめの野菜はいくつかあります。ここでは、トマト以外にもダイエット時におすすめできる代表的な野菜を紹介します。

おすすめ野菜1.アスパラガス

アスパラガスには、アスパラギン酸というアミノ酸の一種が豊富に含まれています。

このアスパラギン酸は、糖質の代謝を助け糖質がエネルギーに変わるよう働きます。そのため、疲労回復効果があり栄養ドリンクなどにも含まれている成分です。

ダイエットにおいては、糖質をエネルギーとして使いやすくしてくれるため、余分な糖質が脂肪に変わるのを防いでくれる効果が期待できます。

おすすめ野菜2.ブロッコリー

ブロッコリーにはビタミンB群が多く含まれており、三大栄養素の代謝を助けてくれます。

私たちの体は炭水化物(糖質)・タンパク質・脂質の三大栄養素を主なエネルギー源として活動しています。しかし、これらの栄養素をただ摂取するだけではエネルギーとして使うことはできません。

三大栄養素をエネルギーとするには、それらの代謝を助けるビタミンB群が必要となります。糖質をビタミンB1が、タンパク質をビタミンB6が、脂質をビタミンB2がそれぞれ代謝を助けエネルギーへ変換してくれます。

おすすめ野菜3.オクラ

オクラには食物繊維が豊富に含まれるため、糖質よりも先に食べておくことで血糖値の急上昇を防げるでしょう。

オクラは100gあたりに食物繊維が5.2g含まれています。「レタス〇個分の食物繊維配合」など、よく比較に出されるレタスの食物繊維量が100gあたり1.1gなため、約5倍の含有量にあたります。

また、これまでご紹介した野菜にも食物繊維は含まれますが、それぞれ100gあたり、トマト(1.0g)、アスパラガス(2.1g)、ブロッコリー(3.7g)となっており、オクラに含まれる食物繊維量が豊富なことがわかります。

※文部科学省提供の「食品成分データベース」より

野菜だけを食べ過ぎず肉や魚もバランスよく食べる

「ダイエットをするぞ!」と意気込むあまり、「野菜だけを食べる」「肉を全く食べない」など極端な食事をする方もいますが、偏った食事はダイエットにならないばかりか体調を崩しかねません。

肉も魚も野菜も、色んな食材をバランスよく食べることがダイエットでは大切です。

「魚はまだしも肉は太るんじゃ?」と思われるかもしれませんが、肉類に含まれるタンパク質や脂質は体にとって必要な栄養素です。過剰に抑えてしまわないよう注意してください。

ダイエット中はカロリーや脂質、糖質などにばかり目が行きがちですが、それらの摂取を抑えることで必要な栄養素までカットされてしまわないようにしましょう。他の食材から補うことも大切です。

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ダイエット中の栄養管理については「ダイエット中の栄養管理の方法|「食事バランスガイド」を解説」で詳しく解説しています。ぜひこちらも参考にしてみてください。

まとめ

ダイエットに効果的である野菜ですが、そればかりを食べていては体調を崩します。色んな食材から様々な栄養素を摂ることを意識して、バランスの取れた食事をとるようにしてください。

とはいえ、バランスの取れた食事というのは案外難しいもの。日々の生活の中で栄養のことを考えて食事をするには、栄養素についての知識が必要不可欠だからです。

そこでおすすめなのがパーソナルトレーニングです。パーソナルトレーニングでは、栄養について深い知識を持つトレーナーから、食事内容について指導やアドバイスを受けられることもあります。

専門家から正しい知識を身につけることは、ダイエットがスムーズにいくだけではなく、パーソナルトレーニング終了後の生活にも活かせるものです。

正しい食生活を習慣づけることができれば、リバウンドの可能性も抑えられるでしょう。