便秘にはさまざまな原因やタイプがありますが、日本人にもっとも多いとされる便秘は「弛緩性便秘」といわれています。
弛緩性便秘とは、大腸のなかで便を肛門側まで押し出す「ぜん動運動(蠕動運動)」と呼ばれる機能が十分にはたらかず、排便がスムーズにおこなわれない便秘のことです。
したがって、便秘の解消にはぜん動運動を活発化させることが重要になりますので、今回はぜん動運動を活発化させて便秘を改善する方法をお伝えします。
便秘の改善方法1.腹筋運動をする
松生クリニックの松生恒夫院長は著書『朝の腸内リセットがカラダを変える』のなかで、腹筋を鍛えることでぜん動運動が活性化すると述べています。また、排便は腹筋による腹圧によって促進されるので、その点でも腹筋を鍛えることは便秘の改善に効果的といえます。
以下では、便秘の改善に効果的な腹筋運動を紹介します。
レッグレイズ
- 仰向けになります。足は揃えて閉じ、手は体の横につけましょう。
- 天井に向かって、足をゆっくりと上げます。足と床が垂直になるまで上がったら、ゆっくりと元に戻していきます。床との距離が5cm程度になったところで、足を止めましょう。
- 2の足の上げ下げ運動を15回2セットおこなってください。
バイシクルクランチ
- 仰向けになって、ヒザを立てます。手は頭の後ろに置きましょう。
- ヒザを曲げたまま、太ももと床が90度の角度になるように足を上げます。
- まず、左足を伸ばします。左足を伸ばすと同時に、左ヒジが右ヒザにつくように、上半身を右にねじりましょう。左足を曲げて引くのと同時に、右足を伸ばします。今度は、右ヒジが左ヒザにつくように、上半身を左にねじってください。このとき、足は自転車のペダルを漕ぐイメージで動かします。
- 3の動作を20回×3セットおこなってください。
便秘の改善方法2.マッサージをする
お腹を押してマッサージすることは、腸を刺激してぜん動運動を促進させる効果があります。
なお、後藤利夫医師は『すぐわかる免疫力の高め方』という書籍のなかで、腸は緊張したときは働きにくく、リラックスしたときによく働くと述べています。マッサージをするときは、排便のための時間を十分に確保し、リラックスした状態でおこないましょう。
以下では、便秘の改善に効果的なマッサージを紹介します。
くるくるマッサージ
- お腹に両手を重ねて、円を描くように時計回りにさすりましょう。決して強く押しすぎず、10〜20回程度さすってください。
- 両手を腰に当てます。腰を温めるために、5秒間程度手を当てましょう。その後、上下に動かして腰と背中をさすりましょう。この動作も10〜20回程度おこなってください。
- 左下腹部にあるS状結腸に指を当てて、優しく20回程度押してください。S状結腸の場所は下の図を参考にしましょう。場所の目安としては、左の腰骨の内側あたりです。
- S状結腸から下方向に向かって、便を押し出すようなイメージでマッサージをおこなってください。
大腸を揺らすマッサージ
- 仰向けになりましょう。腹筋の力を緩めます。
- 両手を使っておへその横あたりをマッサージします。おへそを中心に左右にわけて、片側ずつおこないましょう。1分間程度、大腸を揺らすようなイメージでマッサージをします。片側が終わったら、逆側も同様にマッサージしてください。
- 両手を使って、下腹部(おへその下あたり)を優しく上下に1分間程度揺らしてください。
- 立ち上がって、足を肩幅に開いて、両手を横に伸ばします。
- 上体を左右交互にねじります。この動作を1分間続けてください。
便秘の改善方法3.非水溶性食物繊維を摂る
便秘の改善には食物繊維が多く含まれている食材を食べるのがよいでしょう。
食物繊維はその特徴によって「水溶性」と「非水溶性」の2種類にわけられますが、弛緩性便秘の改善には非水溶性食物繊維の摂取が効果的です。
- 水溶性食物繊維
水に溶ける性質を持っており、便を軟らかくするはたらきがある。ジャガイモやキャベツに多く含まれる。
- 非水溶性食物繊維
水に溶けることなく水分を吸収して膨らむため、便の体積を増加させる。ゆえに、腸壁を刺激してぜん動運動を活性化させるのに役立つ。大豆やゴボウに多く含まれる。
なかには「便の体積を増やすだけなら、わざわざ食物繊維を摂らなくても、食べる量を増やせば便の体積も増えるのでは?」と疑問を抱く方もいるかもしれません。
しかし、そもそも便は消化されなかったものの集まりなので、消化されやすいものをたくさん食べても便の体積は増えない可能性があります。つまりは、便の体積を増やすためには消化されにくいをもの食べたほうがよいということです。
たとえば、肉類などのタンパク質や白米などの炭水化物は消化されやすいため、たくさん食べても便の体積は増えにくいでしょう。その一方で、消化されにくいものが食物繊維であり、特に非水溶性食物繊維は水を吸収するため、便の体積を増やすのです。
非水溶性食物繊維を多く含む食材の一覧表
以下に、非水溶性食物繊維を多く含む食品を列挙しました。便秘気味のときは、非水溶性食物繊維を多く含む食材が使われているメニューを選ぶといいでしょう。
- いりゴマ
- きなこ
- 大豆
- 小豆
- エンドウマメ
- きくらげ
- 干しシイタケ
- 干し柿
- ゴボウ
- 切り干し大根
大切なのは適度な運動と規則正しい食事を「習慣化」すること
ここまで紹介してきたポイントを振り返りましょう。
- 腹筋運動でお腹の筋肉を鍛えること
- マッサージで腸を刺激すること
- 非水溶性食物繊維を摂取して、便の量を増やすこと
また、「どうしても便秘が改善されない」という場合は、大腸系の病気が原因で便秘になっている可能性もありますので、そのときは病院で医師の診断を受けたほうがよいかもしれません。
繰り返しになりますが、そもそも便秘になってしまう背景にはお腹の筋肉が衰えていることや食物繊維の摂取量が少ないことがあります。
便秘になったときに一時的に対策するのではなく、普段から運動をして、栄養バランスの整った食事を摂ることが、便秘体質の改善には必要不可欠です。「便秘体質」の原因を見抜いて、生活習慣そのものから変えられるようにしていきましょう。
- 社会福祉法人恩賜財団済生会ホームページ
- 高野康夫『解剖生理学』
- 松島ランドマーククリニックホームページ
- 松生恒夫『朝の腸内リセットがカラダを変える』
- 主婦の友社編『すぐわかる免疫力の高め方』
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