ダイエットをする方にとって「食事管理」や「栄養管理」は避けては通れない道です。いくら運動をしても、脂っこい食べ物や甘いものなど、カロリーの高いものをたくさん食べていると、痩せるのはなかなか難しいでしょう。
ただ、ダイエットに関するハウツー本やWebの記事を読むと、「規則正しい食生活を心がけよう」「栄養バランスの整った食事を摂ろう」といった食事に関するアドバイスがよくなされていますが、実際のところ「規則正しい食事」や「栄養バランスの整った食事」が具体的にはどんなものを指すのか、よくわかっていないという方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、厚生労働省と農林水産省が共同で策定した「食事バランスガイド」を参考にして「栄養バランスの整った食事の摂り方」について考えます。
何をどれだけ食べればいいのかを説明したうえで、実際の食事メニュー例も紹介しますので、ダイエット中の食事に悩んでいる方はぜひ参考にしてみましょう。
ダイエット中の栄養管理に役立つ「食事バランスガイド」について
「食事バランスガイド」とは、厚生労働省と農林水産省が合同で策定した「何を」「どれだけ」食べればよいのかをイラストでわかりやすく紹介した表のこと。
栄養バランスがおもちゃのコマにたとえて表現されており、コマ本体を構成するのは、「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」の5つのグループです。主食から順にしっかりと食べてほしい順番に並べられています。
そして、コマの軸となっているのは、体に欠かすことのできない水分です。さらに、コマを回す紐にたとえられているのは、食生活に楽しみを与えるお菓子や嗜好飲料です。
栄養バランスがどこかのグループに偏ったり、紐が太くなりすぎたりすると、コマは安定して回りません。コマを安定して回すためには、5つのグループをバランスよく食べることが必要なのです。
また、食事バランスガイドでは、それぞれのグループを「どれだけ」食べればよいかという量を「つ(SV※1)」という単位を用いて数えます。
※1…SVとは、サービング(食事の提供量)の略。
食事バランスガイドは、健康な方々の健康づくりを目的につくられています。糖尿病や高血圧などで医師または栄養管理士からの食事指導を受けている方はその指導に従ってください。また、妊娠や授乳している人は、適量が異なります。医師のアドバイスに従ったうえで、厚生労働省が公開している「妊産婦のための食事バランスガイド」をご覧ください。
食品や食材の区分について
まずは、「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」がそれぞれどのように分けられているのか、食品や食材の区分について説明します。各栄養素と食品や食材がどの区分に分類されるのか理解しましょう。
主食
主に炭水化物の供給源であるごはん、パン、麺、パスタなどの料理が含まれます。
副菜
主にビタミン、ミネラル、食物繊維の供給源である野菜、いも、豆類(大豆を除く)、きのこ、海藻などを主材料とする料理が含まれます。
主菜
主にタンパク質の供給源である肉、魚、卵、大豆、および大豆製品などを主材料とする料理が含まれます。
牛乳・乳製品
主にカルシウムの供給源である、牛乳、ヨーグルト、チーズなどが含まれます。
果物
主にビタミンC、カリウムなどの供給源である、りんご、みかんなどの果実、およびすいか、いちごなどの果実的な野菜が含まれます。
女性に必要な1日分のエネルギー量と摂取の目安
そして、次に考えるのは食事の量です。「何を」「どれだけ」食べればよいのかは、その人の性別、年齢、活動量によって異なりますが、農林水産省のホームページによると、女性に必要な1日分のエネルギー量と摂取の目安は以下のように定められています。
女性(18歳から69歳まで)で1日のうち座っていることがほとんどという方の場合
何を | どれだけ |
エネルギー | 1,800±200kcal |
主食 | 4〜5つ |
副菜 | 5〜6つ |
主菜 | 3〜4つ |
牛乳・乳製品 | 2つ |
果物 | 2つ |
女性(18歳から69歳まで)で座り仕事が中心だが、軽い運動や散歩などをする方の場合
何を | どれだけ |
エネルギー | 2,200±200kcal |
主食 | 5〜7つ |
副菜 | 5〜6つ |
主菜 | 3〜5つ |
牛乳・乳製品 | 2つ |
果物 | 2つ |
ダイエット中に実践したい栄養バランスのよいメニュー例
「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」をそれぞれどのくらい食べればよいのか把握したら、次はそれを具体的なメニューに反映させて考えてみましょう。
食品の量を計算するときは、主な食品の「つ(SV)」がまとめられた「SV早見表」が役立ちます。
ここでは、この早見表を参考にして
- メニュー例1:女性(18歳から69歳まで)で1日中座っていることがほとんどという方の場合
- メニュー例2:女性(18歳から69歳まで)で座り仕事が中心だが、軽い運動や散歩などをする方の場合
のそれぞれの1日の食事メニューの例を紹介します。なお、表で用いている数字の単位は「つ(SV)」です。
女性(18歳から69歳まで)で1日中座っていることがほとんどという方の場合
- 朝食
食品名 | 主食 | 副菜 | 主菜 | 牛乳・乳製品 | 果物 |
ごはん小盛り1杯 | 1 | ||||
鮭の塩焼き | 2 | ||||
リンゴ半分 | 1 |
- 昼食
食品名 | 主食 | 副菜 | 主菜 | 牛乳・乳製品 | 果物 |
スパゲッティ(ナポリタン) | 2 | 1 | |||
ヨーグルト1パック | 1 | ||||
ミカン1個 | 1 |
- 夕食
食品名 | 主食 | 副菜 | 主菜 | 牛乳・乳製品 | 果物 |
ロールパン2個 | 1 | ||||
クリームシチュー | 3 | 2 | 1 | ||
生野菜のサラダ | 1 |
女性(18歳から69歳まで)で座り仕事が中心だが、軽い運動や散歩などをする方の場合
- 朝食
食品名 | 主食 | 副菜 | 主菜 | 牛乳・乳製品 | 果物 |
食パン2枚 | 2 | ||||
スライスチーズ2枚 | 2 | ||||
バナナ1本 | 1 |
- 昼食
食品名 | 主食 | 副菜 | 主菜 | 牛乳・乳製品 | 果物 |
チャーハン | 2 | 1 | 2 | ||
ギョーザ5個 | 1 | 2 | |||
きんぴらごぼう | 1 |
- 夕食
食品名 | 主食 | 副菜 | 主菜 | 牛乳・乳製品 | 果物 |
白ごはん小盛り1杯 | 1 | ||||
肉じゃが(中ばち) | 3 | 1 | |||
柿1個 | 1 |
クリームシチューのように、肉や野菜などさまざまな具材が入っている食品や料理は、それぞれの量をみて、「つ」を考えます。たとえば、クリームシチューの場合は、「副菜」が3、「主菜」が2、「牛乳・乳製品」が1と数えてください。
実際に食品や料理ごとの「つ」を自分でも記入してみることで、自分の食事の栄養バランスがどのようになっているか、客観的に把握することができます。農林水産省が毎日の食事をチェックするためのシート(「フードダイアリー」)を配布していますので、ぜひ記入して、自分の食事の栄養バランスについて考えてみましょう。
毎日の食事で心がけたいの4つのポイント
ここまでは、「何を」「どれだけ」という点に着目し、「栄養バランスの整った食事の摂り方」について考えてきましたが、「何を」「どれだけ」という点以外にも、健康的な食生活を維持するために、心がけるとよいことがあります。
ここでは毎日の食事を摂るうえで心がけてほしい4つのポイントを紹介します。
ポイント1:お米を中心とした食事にすること
ダイエット中の方のなかには「我慢して、お米を食べないようにしている」という方も多いのではないでしょうか。しかし、メニューを工夫することで、お米を食べても摂取カロリーを抑えることは十分に可能です。
ごはんを主食にした和風の食事は、焼き魚やみそ汁、納豆、肉じゃがなどのように、油をあまり使わない料理が多いもの。さらに、お米そのものには油はほとんど含まれません。
お米を抜いて、油がたくさん使われた料理や、お菓子でお腹を満たすよりも、お米とそれに合ったヘルシーな料理を食べるほうが結果的にカロリーを抑えられます。
ポイント2:朝食をきちんと食べること
身支度や家事で忙しく、朝食を抜いてしまうという方も多いでしょう。
しかし、朝ごはんを食べずに、食事の間隔が長くなってしまうと、体がエネルギー切れにならないようにエネルギーを溜め込んだり、あまり使わないようにしたりするため、体脂肪がつきやすくなってしまう可能性があります。
「朝は食欲がない」という方は、無理にきちんとしたごはんを食べなくても構いませんので、野菜ジュースやヨーグルトなど食べやすいものを口に入れるようにしましょう。
ポイント3:栄養バランスは3日から1週間の間の平均で考えること
栄養バランスを考えることは大事ですが、毎日バランスよく食べたり、献立を調整したりするのは難しいかもしれません。その場合は、1日単位ではなく、3日から1週間のスパンで栄養バランスを整えれば大丈夫です。
たとえば、「主食(炭水化物)を食べ過ぎた」という日があれば、翌日は主食を控えめにしたり、逆に「副菜(ビタミン)が足りていない」という日があれば、翌日の副菜の量を少し多めにしたりして、栄養のバランスを調節してください。
「栄養バランスを整えなければ」と意識しすぎると、それがストレスになってしまうこともあるでしょう。毎日完璧に栄養バランスを整えなくても、数日の間で平均して栄養バランスが整っていれば、それでOKです。
ポイント4:お菓子やジュース・お酒は1日200kcal程度に抑えること
食事バランスガイドでは、お菓子や嗜好飲料(ジュース・お酒)は食生活における楽しみであるとされ、適度に摂る必要があると提唱されています。しかし、あくまでも適度に楽しむことが大切です。お菓子や嗜好飲料の目安は1日200kcal程度に抑えるようにしましょう。
「食事を抜いているのに、お菓子は食べている」「お菓子を食事代わりにしている」という方はいませんか?
お菓子やジュースは手軽に口にできますし、美味しいものが多いのですが、食生活の中心がお菓子やジュースになってしまうと、栄養バランスがくずれてしまいます。
お菓子やジュースはなるべく控えて、3食の食事をきちんと摂るようにしてください。小腹が空いたときに、ついお菓子を食べてしまうという方は、ヨーグルトや果物を食べることで、食欲と栄養の両方を満たせます。
ダイエットでは栄養バランスの整った食事と適度な運動が大事
食事バランスガイドをもう一度よく見てみましょう。冒頭で少し触れましたが、てっぺん部分に走る人のイラストが描かれていることに気がつくはずです。
このイラストに込められているのは、「コマを回すためには、栄養バランスを整えるだけではなく、適度な運動も必要である」というメッセージ。ダイエット中の方にとっては、ことさらいう必要のないことかもしれませんが、ダイエットや健康維持には、食事と運動の両方をきちんと取り入れるようにしていきましょう。
コメント