拮抗筋(きっこうきん)という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?「拮抗」という字からなんとなく想像はついてもよくわからないという方が多いかもしれません。
メインに鍛えたい筋肉が主動筋と呼ばれ、その反対の働きを担う筋肉を拮抗筋と呼びます。どちらか一方ではなく、両方をバランスよく鍛えることが重要です。
この拮抗筋を意識してトレーニングメニューを組めば、より効果的に筋肉へ刺激を与えることができるようになるでしょう。また、バランス良く筋肉を鍛える大切さも理解できるかと思います。
今回はそんな拮抗筋とは何なのかを紹介していきます。
主動筋・拮抗筋とは
拮抗筋とは、ある筋肉と正反対の動きを持つ筋肉を指す言葉です。英語では「拮抗筋:antagonist(敵対者・相手)」と表現され、メインで鍛える「主動筋」とセットとなる筋肉です。
例えばヒジを曲げる役割を持つ上腕二頭筋を鍛えたいのであれば、メインとなる上腕二頭筋が「主動筋」と呼ばれ、その対となるヒジを伸ばす役割を持つ上腕三頭筋が「拮抗筋」となります。
しかし、これはあくまで上腕二頭筋を主動筋とした場合です。上腕三頭筋を主動筋と定めるのなら、上腕二頭筋が拮抗筋となります。
筋肉は「収縮と伸展」で動きます。主動筋が縮む時に拮抗筋が伸びており、主動筋が伸びている時には拮抗筋が縮んでいます。このように2つの筋肉がペアとなり伸び縮みすることで、体を動かすことができます。
なかには三角筋のように拮抗筋がない筋肉もありますが、多くの場合で上記の上腕二頭筋と上腕三頭筋のように、骨や関節をまたいで拮抗筋が存在します。
拮抗筋をトレーニングすることで得られる効果
主動筋だけでなく、その拮抗筋となる筋肉も合わせて鍛えることで以下のような効果が期待できます。
各種目のフォームが安定する
例えば大胸筋を鍛える種目として効果的なベンチプレスを行う場合、主動筋として大胸筋や上腕三頭筋へ刺激が集中します。これらの押す動作に働く筋肉だけでなく、拮抗筋もこの時動いています。
なぜなら関節を曲げるためには主動筋だけでなく、拮抗筋も同じく動かなくてはならないからです。
そのため拮抗筋を鍛えることで、主動筋の動きもスムーズになり、より安定感のあるベンチプレスのフォームができるようになります。
全身をバランス良く鍛えることができる
拮抗筋はほとんどの場合、主動筋の反対側に位置しているため、拮抗筋も意識的に鍛えることでバランスよく鍛えられます。
例えば大胸筋ばかり鍛えると体の前面ばかりたくましくなり、背面は筋肉の少ないアンバランスな体つきになるかもしれません。しかし、大胸筋の拮抗筋である背中の広背筋も鍛えれば均整の取れた体に仕上げることができるでしょう。
トレーニングの時間効率アップ
同じ筋肉ばかり重点的に鍛え続けることは現実的ではありません。インターバルがないと疲労が蓄積してしまうため、連続で同じ種目を続けられないからです。
主動筋ばかりを鍛えようとすると休憩を挟む必要があり、どうしても時間がかかります。もちろんインターバルを挟むことが筋肉の成長には必要不可欠なのですが、休憩時間がもったいないと感じる方もいらっしゃるでしょう。
主動筋と拮抗筋を交互に鍛えれば、筋肉を休ませながら逆の働きをする筋肉を鍛えることができます。また、筋トレの時間を取りづらい方でもトレーニングに励めるでしょう。
普段と異なる刺激を筋肉に与えられる
常に主動筋のみのトレーニングをしている方は、主動筋と拮抗筋を交互に鍛えることで、普段と異なる刺激を筋肉に与えられます。
上腕二頭筋を例にすると、拮抗筋である上腕三頭筋が「疲労している場合」と「疲労していない場合」では、上腕二頭筋のトレーニング効果が変化します。
筋肉の成長のために、与える刺激を変えることは非常に重要です。拮抗筋の筋トレを普段のトレーニングに取り入れ、筋肉への刺激をうまく変化させてください。
主な主動筋と拮抗筋の一覧
それでは主な主動筋と拮抗筋を一覧で紹介します。主動筋と拮抗筋はどちらをメインと考えるかで変わってくるため、それぞれ主動筋であり、拮抗筋でもあります。
大胸筋と広背筋
大胸筋は胸を覆っている筋肉で、主に押す動作に使われます。鍛えることで厚い胸板やバストアップを目指すことができます。
対して広背筋は背中を覆っている筋肉で、主に引く動作で働く筋肉です。
広背筋を鍛えることで広い背中を目指すことができるため、逆三角形の体を目指すには欠かさず鍛える必要があります。
主動筋 | 拮抗筋 | |
筋肉の名称 | 大胸筋 | 広背筋 |
主な動作 | 押す | 引く |
筋肉の位置 | 胸 | 背中 |
代表的な筋トレ | ベンチプレス | ラットプルダウン |
上腕二頭筋と上腕三頭筋
上腕二頭筋は上腕(ヒジから肩)の筋肉で、いわゆる力こぶを作る筋肉です。力こぶを作る時のように、ヒジを曲げる動作で使われます。
上腕二頭筋を鍛えるとたくましい力こぶを手に入れることができます。
上腕三頭筋は上腕の裏側を覆っている筋肉です。力こぶを作った際に、その反対側に位置します。ヒジを伸ばすのに使われています。
上腕三頭筋を鍛えることによって引き締まった二の腕を手に入れることができます。
主動筋 | 拮抗筋 | |
筋肉の名称 | 上腕二頭筋 | 上腕三頭筋 |
主な動作 | ヒジを曲げる | ヒジを伸ばす |
筋肉の位置 | 上腕(腕を組んだ時に内側) | 上腕(腕を組んだ時に外側) |
代表的な筋トレ | ダンベルカール | トライセプスキックバック |
腹直筋と脊柱起立筋
腹直筋はお腹を覆っている筋肉で、一般的に腹筋と呼ばれる部分です。仰向けの際に起き上がる時のように、体を前に曲げるために主に働きます。
腹直筋を鍛えることで引き締まったお腹を目指すことができ、姿勢がよくなる効果もあります。
脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)は背骨付近を覆うようにある背中の筋肉です。姿勢をキープするために働く筋肉で、背中を後ろに倒す際にも使われます。
脊柱起立筋を鍛えることで背すじの通った綺麗な姿勢を手に入れることができ、背中を引き締めることにもつながります。
主動筋 | 拮抗筋 | |
筋肉の名称 | 腹直筋 | 脊柱起立筋 |
主な動作 | 体を丸める | 体を後ろに倒す |
筋肉の位置 | お腹 | 背骨周辺 |
代表的な筋トレ | クランチ | バックエクステンション |
大腿四頭筋とハムストリング
大腿四頭筋(だいたいしとうきん)は太ももの前面を覆っている筋肉で、ヒザを伸ばす働きがあります。歩く、階段を上るなど日常的に使われています。
大腿四頭筋を鍛えることで太くたくましい太ももを手に入れることができます。
ハムストリングは太ももの裏側の筋肉で、ヒザを曲げる働きを持っています。こちらも歩く、階段を上るなどで使われています。
ハムストリングを鍛えることで太ももの引き締めや、ヒップアップ効果が期待できます。
主動筋 | 拮抗筋 | |
筋肉の名称 | 大腿四頭筋 | ハムストリング |
主な動作 | ヒザを伸ばす | ヒザを曲げる |
筋肉の位置 | 太もも前側 | 太もも裏側 |
代表的な筋トレ | スクワット | ランジ |
拮抗筋のトレーニング方法「スーパーセット法」
拮抗筋を鍛える方法として「スーパーセット法」と呼ばれるものがあります。これはインターバルを設けることなく「主動筋」と「拮抗筋」を交互に鍛えるという方法です。
例えば上腕二頭筋を鍛えるダンベルカールの後に、間髪入れず上腕三頭筋を鍛えるトライセプスキックバックを行うといった方法です。
インターバルを挟むことなく続けざまに鍛えるため、時間効率の高いトレーニングメニューです。また、息を整える隙なく鍛えるため、心肺強化にもつながります。
例えば、上記のように「上腕二頭筋」と「上腕三頭筋」を対象にしたスーパーセットを組む場合、次のようなメニューが考えられます。
- ダンベルカールを10回〜15回
- トライセプスキックバック10回〜15回
これを1セットとして、3セット程度繰り返します。
スーパーセットはインターバルを空けずにトレーニングするという性質上、大きな筋肉には不向きな方法です。筋肉が大きいほど体への負担も大きくなるからです。例えば足を大きく動かすスクワットと、腕だけを動かすダンベルカールでは疲労度が全く異なり、前者の方がキツイのは明白です。
そのため、どちらかというと小さい筋肉に向いたトレーニング方法です。ご自身の体力に合わせて組み合わせるようにしましょう。
ただし、インターバルがないため「初心者」の場合は筋トレのフォームが崩れやすく、おすすめできません。正しいフォームで行ってこそ鍛えたい部位が鍛えられます。ある程度フォームをマスターしてから取り入れましょう。
まとめ
今回は筋トレの効率をアップさせることができる「主動筋」と「拮抗筋」について紹介しました。
ここだけは押さえておきたい!拮抗筋のポイント
- メインターゲットとなる主動筋と反対の役割を持つ筋肉
- 主動筋と拮抗筋はどちらをメインに据えるかで入れ替わる
主動筋か拮抗筋かというのはメインに鍛える部位をどこにするかによって変わるものです。主動筋と拮抗筋はその都度入れ替わるものだと理解しておきましょう。
スーパーセット法のように、主動筋と拮抗筋を組み合わせて鍛えることは非常に効果的で、時間効率も高い方法です。TOREMOでは動画や画像付きでさまざまなトレーニングについてもを紹介しています。理想の体に近づくためのトレーニングを見つけることができるので、ぜひ参考にしてみてください。
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