体脂肪を燃やす効果がある有酸素運動に対して、筋トレには「脂肪が蓄積しにくい体を作る」効果があります。つまり、筋トレをすることで太りにくい体を作れるということです。
しかし、「痩せたい」と願う女性の中には「筋トレをしたら筋肉が大きくなって、かえって太って見えそう」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。
そこでこの記事では、「筋トレってダイエットに効果があるの?」「筋トレをしたら筋肉太りしない?」という疑問に答えるべく、筋トレのダイエット効果やしなやかな筋肉を作るためのトレーニングのコツを紹介します。
ダイエットには筋トレよりも有酸素運動が効果的ってホント?
ダイエットというと筋トレよりも有酸素運動の方が適していると思われる方は多いことでしょう。
実際に、有酸素運動では酸素を燃焼材にして体内に蓄積された脂肪が燃やされるため、有酸素運動はダイエットに効果的です。
しかし一方で、筋トレにも「脂肪がつきにくくなる」というダイエット効果があります。なぜなら、筋トレをして筋肉量が増えれば、基礎代謝が向上し、1日でエネルギーとして消費されるカロリーの量が増えるからです。
体脂肪となるのは、摂取されたもののエネルギーとして使われることなく余ってしまったカロリーです。したがって、基礎代謝が良くなり、消費されるカロリーの量が増えれば、余るカロリーの量も少なくなるため、体脂肪がつきにくくなるというわけです。
このように、有酸素運動だけではなく、筋トレもダイエットに抜群の効果があります。筋トレのダイエット効果は以下の「筋トレで得られる2つのダイエット効果」で詳しく解説しますので、ご覧ください。
ダイエットで美しいカラダを目指すなら体重よりも見た目を重視すべき
上でも少し触れましたが、特に女性の場合「筋トレをすると、体重が増えそう」と心配されている方も多いかもしれません。
確かに、筋肉は脂肪よりも重いため、筋トレをすると体重が増えたり、あるいは脂肪を落としたにも関わらず横ばいであったりということがあるかもしれません。
しかし、一般的に「美しい体形」の象徴として挙げられる、キュッと上がったヒップやくびれたお腹周りを作るためには、単に体重を落とすだけではなく、程よく筋肉をつけていくことが必要不可欠です。
これまで、「体重は減ったのに、理想の体形とは言えない」「決して太っているわけではないのに、いまいちスタイルが映えない」と感じた経験はありませんか?
これは、体重だけを重視してダイエットや体形のコントロールを行った場合によくある失敗談です。
たとえ体重が増えたとしても、筋トレで全体的に引き締まった体の方がメリハリのあるいわゆる「美しい体形」に近いと言えます。いくら体重が軽くても、棒のように細すぎたり、お尻がたるんでいては、お世辞にも「美しい」とは言えません。
もちろん、ダイエットを行う上で体重は重要な指標となりますが、あくまでも体重の変化は参考値程度に留めておき、毎日お風呂上がりに鏡をチェックするなどして、見た目の変化を重要視するようにすることをオススメします。
筋トレで得られる2つのダイエット効果
「ダイエットには筋トレよりも有酸素運動が効果的ってホント?」で「筋トレはダイエットにおすすめ」と紹介しましたが、具体的にどんな効果があるのでしょうか?
ここでは、筋トレをすることで得られるダイエット効果を2つ紹介します。
- 基礎代謝が向上し、脂肪がつきにくくなる
- 筋トレの後に有酸素運動を行うと脂肪が燃えやすくなる
それでは以下で詳しく見ていきましょう。
筋トレのダイエット効果1.基礎代謝が向上し、脂肪がつきにくくなる
筋トレによるダイエット効果としてまず「太りにくい体になれる」ということが挙げられます。
筋トレで筋肉量を増やせば、基礎代謝によって消費されるエネルギー量が増え、脂肪が蓄積されにくくなるからです。
基礎代謝とは、平たく言えば「何もしていなくても消費されるエネルギー」のことです。
私たちの体は、常に休むことなく活動しています。例えば、呼吸をしたり、心臓が動いたりという生命維持に欠かせない無意識の間に起こる活動もその一つです。そういった無意識の活動に必要なエネルギーこそが基礎代謝と呼ばれるものです。
基礎代謝は、一日に消費されるカロリーのうち約6割〜7割を占めます。そのため基礎代謝の高い人は、何もしていなくても消費されるカロリーが大きい人と言い換えることもでき、基礎代謝の高い人=痩せやすい人だと言えます。
この基礎代謝の中に含まれる、筋肉によるエネルギー消費量は約3〜4割です。割合としては少ないように感じるかもしれませんが、残りは肝臓や脳といった器官で消費されているエネルギーです。
そのため、消費エネルギーを増やそうと思えば、おのずと筋肉量を増やすことが必要となります。つまり、基礎代謝によるエネルギー消費量は、筋肉量に比例して増えていくのです。
例えば、筋肉量が異なる二人が同じ量の食事をしたとしましょう。同じ量の食事をしているにも関わらず、筋肉量の多い人の方が、体に脂肪として吸収される割合は少なくなります。
また、東京大学の石井直方教授は著書のなかで以下のように述べています。
筋肉が2kg増えれば、安静時の消費エネルギーは1日当たり50~100kcal程度増えると考えられます。
参考文献:石井直方著「痩筋力 確実にやせる筋トレ術」
このように筋トレで筋肉量を増やすことは基礎代謝の向上に繋がり、結果として「エネルギーを消費しやすい」体質になります。
筋トレのダイエット効果2.筋トレの後に有酸素運動を行うと脂肪が燃えやすくなる
筋トレには基礎代謝が向上するだけでなく、有酸素運動による脂肪燃焼を助ける効果もあります。
有酸素運動では「糖質」と「脂肪」がエネルギーとして使用されます。まず糖質が消費され、次に血中の脂肪が、その後内臓脂肪や皮下脂肪が分解されエネルギーとして使われていきます。
脂肪をエネルギーとして使うには糖質よりも多くの酸素が必要となるため、運動開始段階では酸素の供給が追い付かず糖質から使用されますが、エネルギーとして糖と脂肪が使われる割合は5対5です。
ただし、筋トレを先に行ってから有酸素運動を行うとこの割合が4対6~3対7に変わり、脂肪の方が多く消費されるようになります。
これに関して東京大学の石井直方教授は著書のなかで以下のように述べています。
筋トレ後の代謝が上がった状態の間は脂肪が使われる割合が上がるということもわかっています。糖と脂肪が使われる割合は通常なら5対5のところ、筋トレ後は、4対6~3対7に比率が変わるのです。
参考文献:石井直方著「痩筋力 確実にやせる筋トレ術」
つまり、筋トレをすることで、脂肪が使われやすい状態の体にできるというわけです。
筋トレで筋肉を刺激することにより、交感神経が活性化されます。活性化された交感神経は「アドレナリン」や「成長ホルモン」といった脂肪を分解してくれるホルモンを分泌するよう脳下垂体などに促します。
脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪のままでは燃えず、このホルモンによって「脂肪酸」に分解されて初めてエネルギーとして消費されるのです。
ちなみに、この脂肪酸へと分解された脂肪は消費されなかった場合、また元の脂肪に戻ってしまいます。
脂肪が分解されるには、筋トレによって筋肉を刺激することが重要なため、有酸素運動の「前に」筋トレを行うことがダイエットにおいてとても効果的です。
有酸素運動後の筋トレは逆効果?
有酸素運動を行ってから、筋トレを行うと成長ホルモンの分泌量が大きく低下します。成長ホルモンはアドレナリンよりも脂肪を分解する働きが強いホルモンのため、成長ホルモンの低下は大きな損失です。
筋トレと有酸素運動をセットで行うなら、必ず筋トレを「先に」行うようにしましょう。
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有酸素運動にかけるべき時間、適切な運動負荷など、押さえるべき大事な3つのポイントを「有酸素運動は脂肪燃焼効果抜群|効率よく痩せるための3つのポイント」で紹介しています。是非参考にしてみてください。
筋肉のつき具合をチェックする方法
ここまでは筋トレのダイエット効果を紹介してきましたが、ここで自分の筋肉の付き具合をチェックしてみましょう。
今回は東京大学の石井直方教授著「痩筋力 確実にやせる筋トレ術」で紹介されているチェック方法を紹介しますので、自分はどの部位の筋肉を強化すべきなのか確認してみてください。
チェック1.腹筋|仰向けで何秒間上体を起こせる?
上体を床から20~25度ほど起こした状態を何秒間キープできるかで、腹筋をチェックします。
- 仰向けになって、両手を胸の前で交差させます。
- ヒザを立てて、お尻とかかとを離した状態で、両足を動かないよう固定します。
- 上体を床から20~25度ほど起こし、その状態をキープします。
あなたの腹筋を判定
- 【60秒以上】腹筋の力に問題ありません。衰えないよう維持するためのトレーニングを心がけましょう。
- 【30秒~60秒未満】腹筋が衰えつつあります。何もしなければどんどん衰えていきます。腹筋のトレーニングを始めましょう。
- 【30秒未満】かなり腹筋が衰えているようです。すぐにトレーニングを始めましょう。
腹筋を鍛えるにはクランチやレッグレイズといった種目がおすすめです。30秒未満で耐え切れなくなった方は、「筋トレ初心者必見|10種類のクランチのやり方と効果を徹底解説」で紹介しているクランチから始めましょう。
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チェック2.背筋|うつ伏せで何秒間上体を上げられる?
上体を床から20~25度ほど上げた姿勢を何秒間キープできるかで、背筋をチェックします。
- うつ伏せになって、両手を腰のあたりで組みます。
- 両足はパートナーに持ってもらうなど、動かないよう固定しましょう。
- 上体を床から20~25度ほど上げ、その姿勢をキープします。
あなたの背筋を判定
- 【60秒以上】背筋の力に問題ありません。衰えてしまわないように、背筋を維持するトレーニングを意識しましょう。
- 【30秒~60秒未満】60秒近くできるなら及第点です。しかし、30~40秒ほどしか姿勢をキープできないようだと運動不足です。
- 【30秒未満】かなり背筋が衰えているようです。今すぐトレーニングを始めましょう。背筋が衰えることで上体を支えられず、腰に負担がかかっているかもしれません。
背中を鍛えるにはいわゆる背筋運動であるバックエクステンションがおすすめです。自重だけで行うため、30秒未満で耐え切れなくなった方にもおすすめです。60秒近く耐え切れた方はチンニングでさらに背筋を鍛えましょう。
チェック3.バランス感覚|目を閉じて片足で何秒間立てる?
片足立ちで目をつぶって何秒間立っていられるかで、体幹をチェックします。ふらついても、上げた足が床や軸足に触れず、軸足の位置が変わらなければセーフです。
- 直立状態で両手を左右に広げ、目を閉じて片足立ちをします。
- 上げる方の片足はもも上げのイメージで、ヒザが90度ほどになるまで上げましょう。
- この状態で立ち続けます。
以下の表は年代・男女別の全国平均の目安です。この平均値に達しない場合は、筋力の低下や関節の可動域が狭くなっている可能性が考えられます。体幹が衰えていると言えるため、日頃からトレーニングを心がけましょう。
年齢 | 男性 | 女性 |
20代 | 80秒 | 80秒 |
30代 | 75秒 | 75秒 |
40代 | 50秒 | 50秒 |
50代 | 35秒 | 35秒 |
60代 | 10秒 | 8秒 |
70代 | 5秒 | 5秒 |
バランスを取るためには「体幹」が重要です。上手くバランスを取れなかったという方は体幹を強化しましょう。関連記事で紹介している「マウンテンクライマー」は有酸素運動も兼ねているため、ダイエットにおすすめの筋トレです。是非挑戦してみてください。
チェック4.歩行能力|大股で2歩踏み出した時の距離は?
直立した状態から、大股で「2歩」大きく前進してみてください。スタート地点から、2歩踏み出した地点までの距離をチェックします。
- 直立したまま、大きく1歩前に踏み出します。
- さらにもう1歩、大きく踏み出します。
- 2歩踏み出した地点と、スタート地点との距離を計測しましょう。
以下の表は、年代別の大股で2歩踏み出した時の歩幅平均値です。歩幅は年齢に反比例して狭くなっていきます。平均値に満たないという場合は、太ももやお尻、腹筋などの筋肉が衰えているかもしれません。
年齢 | 距離 |
20代 | 身長の1.8倍 |
30代 | 身長の1.7倍 |
40代 | 身長の1.6倍 |
50代 | 身長の1.5倍 |
60代 | 身長の1.4倍 |
70代 | 身長の1.25倍 |
太ももやお尻、腹筋の衰えは見た目にも顕著に表れてくる部分です。しっかり鍛えて引き締めましょう。そこで、全身の筋肉を使い、有酸素運動にもなるバーピーがおすすめです。一度に多くの筋肉を使い、脂肪燃焼にもなるため一石二鳥と言えます。
特にお尻と太ももが気になる方にはブルガリアンスクワットが、腹筋が気になる方にはニーレイズがおすすめです。是非参考にしてみてください。
筋トレに関する4つの疑問
ここでは、筋トレに関するよくある疑問をピックアップしました。特に、「これから筋トレを始めたい」という筋トレ初心者の方は是非参考にしてみてください。
疑問1.「筋トレをしたら体重は増えるの?」
結論から言うと、筋トレをすることで体重は増えやすい傾向にあります。筋肉は脂肪よりも重いため、筋肉量の増加と体重の増加は基本的に比例します。
しかし筋トレをすることで、無駄な脂肪のない引き締まったボディを実現できることも事実です。筋肉がつくことで体重が増えてしまうかもしれませんが、見た目は引き締まっているはずです。
そのためあまり体重だけにとらわれず、ダイエットに取り組むという姿勢も必要と言えます。ダイエットの成果は体重の増減でなく、見た目の変化で判断しましょう。
疑問2.「筋トレをしたらゴツゴツした体になりそう」
筋トレをすることで、「スポーツ選手のようなゴツゴツした体になってしまうのでは?」と心配される方や、「筋肉のせいで逆に太って見えるのでは?」「太ももに筋肉がついて太くなりそう」と心配される方もいらっしゃるでしょう。
しかし、アスリートのようなたくましい筋肉はそれ相応の厳しいトレーニングがあってこそです。アスリート並みに追い込まない限りは筋肉の目立つ体つきにはなりません。
特に女性の場合はもともと筋肉がつきにくい体です。なぜならば、筋肉が発達するには、体脂肪を減らすテストステロンなどの男性ホルモンが必要になるからです。
男性ホルモンが多い男性でも筋肉をつけるには相応の努力が必要となります。男性ホルモンが少ない女性であれば、そうそう筋肉がつき過ぎることはありません。
疑問3.「筋トレは毎日やってもいいの?」
同じ部位の筋トレは基本的に2~3日間隔を空けて行うのがベストです。
「せっかく筋トレを始めるなら毎日欠かさず頑張ろう!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、筋肉には休息も必要です。
休息中に「超回復」と呼ばれる修復作業が行われ、傷ついた筋肉が回復することで、太くなります。そのため休息も大事な期間であり、毎日同じ部位ばかり鍛えても疲労が蓄積され、上手く成果は出ないでしょう。
もし毎日筋トレを行うのであれば、鍛える部位が異なるトレーニングを組み合わせましょう。
例えば1日目はスクワット(下半身)、2日目はダンベルプレス(大胸筋)、3日目はラットプルダウン(広背筋)…といったように、異なる部位を鍛える種目を日替わりで行うことで、メインに使う筋肉をローテーションします。
これがどの種目も「腕の筋肉」を使う、「太ももの筋肉」を使うといった偏った組み合わせになると、オーバーワークになってしまうため注意しましょう。
腹筋と背筋は例外的に毎日鍛えても大丈夫
腹筋と背筋は姿勢の維持に関わるため、常に使われ続けています。そのため、回復する周期が他の筋肉よりも早いという特性を持っています。また、遅筋と呼ばれるスタミナの高い筋繊維が多く含まれていることもあり、ダメージが蓄積されにくくなっています。
疑問4.「筋トレはどのくらい続ければ痩せる?」
筋トレの効果が出るまでは、短くても3か月は続けることが大事です。というのも、鍛えたからといってすぐに筋肉が発達するわけではありません。どうしてもある程度継続して刺激を与え続ける必要があります。
3か月というのは、新しい刺激を加えることで人間の体に変化が起こり始め、それが完了するまでの期間。筋トレで筋肉に刺激を与え始めると、筋繊維の疲労と回復が繰り返されて筋繊維が太くなっていきますが、それが目に見える形になるまでに3か月かかるということなんですね。
参考文献:石井直方「痩筋力 確実にやせる筋トレ術」
少しずつ効果が目に見えてくる目安が3か月です。これには個人差があるため、早ければ1か月で成果を感じられるかもしれませんし、半年ほど必要な場合もあります。
効果が実感できないとなかなかモチベーションを保つことは難しいかもしれませんが、最低3か月は頑張りましょう。
自分の変化に敏感になることがモチベーション維持につながる
目に見えて効果が現れ始めるまでは半信半疑でトレーニングせねばならず、モチベーションを保つことは難しいでしょう。しかし、「目に見えた効果」が出てくる目安は3か月ですが、「目に見えない効果」はそれ以前にも表れています。
「元気になった気がする」「走っても以前ほど息切れしなくなった」そんな変化が筋トレを始めることで起こります。こういったちょっとした変化に敏感になりましょう。
小さな変化を数えながら続けているうちに、明らかな変化が起こるはずです。自分自身の変化に気づく努力も大切です。
もし、半年以上続けていても思ったように成果が実感できない場合は、トレーニング方法が間違っているかもしれません。一度トレーニングのフォームや食事内容などを見直しましょう。
また、パーソナルトレーナーに相談することもおすすめです。フォームの指導はもちろんのこと、食事内容など生活習慣やトレーニングの頻度に問題はなかったかなど、様々な面からアドバイスを受けることができます。
筋トレのダイエット効果を最大化させるためのポイント
ここからは、筋トレによるダイエット効果を最大限まで高めるためのポイントを紹介していきます。
ポイント1.筋トレを行うタイミングは午前中がおすすめ
午前中に筋トレを行うことで、一日のエネルギー消費量が増えます。
前述したように、筋トレを行うことで代謝の高い状態が持続します。これはおよそ6時間は続くため、午前中に筋トレをすることで、一日のエネルギー消費量が上昇するのです。
上手に行えば、安静時代謝が20%程度はアップする。全エネルギー消費量のうち、安静時代謝が占める割合を60%として計算すると、1日トータルとしてのエネルギー消費量は10%も高くなるということです。例えば、1日に通常2000kcalを消費する人であれば、それが200kcalも増えるのですから、バカにはできません。200kcalは茶碗に1膳分くらいのご飯に相当します。
参考文献:石井直方著「痩筋力 確実にやせる筋トレ術」
石井直方教授が著書で述べているように、1日のエネルギー消費量が10%も増えることは大きな変化と言えるでしょう。
これに加えて先に述べたように、筋トレを行うことで脂肪を分解するアドレナリンや成長ホルモンといったホルモンが分泌されます。そのため、午前中に筋トレを行っておけば、普通の生活を行っているだけでも脂肪が消費されやすくなります。
とはいえ、忙しい朝になかなか時間を確保することは難しいと思われます。そういう場合は、午前中のちょっとした空き時間やお昼前などに行いましょう。また、起床後すぐは体が目覚めていないため、朝に行う場合は起床から30分後を目安にしましょう。
就寝前の筋トレは眠りの妨げに
寝る直前に筋トレを行うと、交感神経が活発化するため、質の良い睡眠をとることが難しくなります。
夜に筋トレを行うなら、寝る前にゆっくりと入浴するなど、体をリラックスモードに切り替える働きがある副交感神経を活発化させるよう工夫しましょう。
ポイント2.筋トレの最適な回数は「10回×3セット」
10回~20回で限界になるトレーニングを3セット行うことが理想的です。
筋トレの負荷を計る目安として、回数やウエイトの重量などが真っ先に浮かぶかと思いますが、筋トレにおいて重要なのは負荷の強さです。
とはいえ、「どれくらいの負荷で何回できるか」「どれくらい重いウエイトが適しているのか」というのは個人差があるため一概に言えることではありません。
そこで、「1RM」を基準に考えましょう。
1RMというのはその人がやっと一回こなせるだけの負荷です。そのため1RMの負荷でトレーニングを行うのは現実的ではありません。筋肉を太くするには「65%~80%1RM」の負荷でトレーニングしましょう。
「65%~80%1RM」って?
1RM=100kgの場合、65%なら65kg、80%なら80kgです。目安としては65%1RMは20回ほど、80%1RMは10回ほどで限界がくる負荷となります。
このような数字で表現するといまいちピンと来ないかもしれませんが、この「1RM」の考え方を用いることで、10回~20回ようやくこなせるほどの負荷がどれくらいなのか判断することができます。
また、筋トレでは回数だけでなく「セット数」も重要な要素です。10回×3セットと、30回のトレーニングでは例え回数が同じでも、得られる成果は違います。
なぜなら30回連続して行えるのであれば、もっと負荷を上げた方が効果的です。10回~20回こなせるのがやっとの負荷を探すのは、前述したように筋トレにおいて回数よりも負荷の強さが重要だからです。
そして、セットを組むこと自体にも意味があります。1セットだけのトレーニングと3セット組んだトレーニングではその効果が大きく異なります。
実はトレーニング科学の分野では、1セットしかやらないときの効果は、単純に3セットやった効果の3分の1というわけではなく、それ以下だということがわかっているのです。
参考文献:石井直方著「痩筋力 確実にやせる筋トレ術」
1セット目が終われば休憩を挟み、2セット目へ、それが終わればまた休憩を挟んで3セット目です。この休憩時間は短い方が筋肉を太くするには効果的です。具体的には1分が理想のため、1~3分ほどの休憩を挟みましょう。
最初の内はセットを組むことは難しいかもしれませんが、2セット目、3セット目の回数を少なくしても効果はあるため、「あと少しだけ」という気持ちで頑張りましょう。
ポイント3.筋トレは「ながら」でやらない
筋トレは「ながら」ではなく、集中して取り組みましょう。
音楽を聴きながらのウォーキング、景色を楽しみながらのジョギングなど、「ながら」で有酸素運動に取り組まれる方は多いでしょう。しかし、筋トレにおいてはこのような「ながら」では十分な効果を得ることはできません。
筋トレはフォームがとても大事で、正しいフォームで行ってこそ効果も最大になります。そのためには一つ一つの動作に集中すること、狙った筋肉に効いているか確認することが非常に重要になってきます。
例えば筋トレのなかでもポピュラーなスクワット。ヒザを曲げ伸ばしするだけの簡単なトレーニングと思われるかもしれませんが、キチンとしたフォームで行わなければ太ももの筋肉に負荷がかからず、ただ疲れるだけになります。
特に初心者の場合はフォームが身についていないため「ながら」では行わず、一つ一つの動作を集中して丁寧に取り組みましょう。
また、ネガティブ動作と呼ばれるダンベルを下ろす際や、スクワットのヒザを伸ばす際なども意識して丁寧に行うことで得られる効果には大きな違いが生まれます。フォームによる効果の違いと、ネガティブ動作については下記関連記事で詳しく紹介しています。
ポイント4.筋トレ中は呼吸を意識する
「筋肉が収縮する時に息を吐く」、「筋肉が伸長する時に息を吸う」というのが基本です。筋トレをする時に力を込めようと息を止める方がいますが、筋トレでは呼吸も非常に重要な要素です。
例えばスクワットであればしゃがむ時に息を吸い、立ち上がる時に息を吐きます。腕立て伏せであれば体を落とす時に息を吸い、体を持ち上げる時に息を吐きます。
筋肉の収縮、伸長と言われてもピンと来ないかもしれませんが、上記のように「負荷がかかる際には息を吐き」「負荷が低くなる時に息を吸う」ように意識しましょう。
また、息を吐く時は「長く強く吐く」ことも意識しましょう。息を長く強く吐こうとすれば自然と腹筋に力が入ります。これにより体幹が安定し、体の隅々まで力を込めやすくなるため筋トレの効果が高まります。
ポイント5.筋トレ後2時間以内に有酸素運動を行う
有酸素運動によるカロリー消費量自体は筋トレの前でも後でも変化はありませんが、筋トレの後に有酸素運動を行うと、カロリー消費のうちに占める脂肪の割合が増加します。
先ほど紹介した「成長ホルモン」による脂肪分解は時間経過によって変動します。筋トレ後1時間から分解が始まり、2時間後にはピークを迎えます。そのため、筋トレから2時間経過してから有酸素運動を行うことでより多くの脂肪を消費できるということになります。
筋トレを行った後に有酸素運動を行うのはキツイと感じるかもしれませんが、この2時間を逃す手はありません。筋トレ後2時間以内に有酸素運動を行いましょう。
筋トレの効果を高めるための食事の摂り方5か条
筋トレの効果を高めるには食事も重要な要素です。普段の生活に以下の5つを組み込みましょう。
その1.筋トレ前に機能性食品でBCAAを摂るべし
筋トレ前にゼリータイプの機能性食品で分岐鎖アミノ酸を摂ることで、筋肉の分解を防ぎましょう。
筋トレでは脂肪は消費されず、糖とアミノ酸がエネルギーとして消費されます。このアミノ酸は筋肉を構成するたんぱく質を分解してできたものです。つまり、筋肉を鍛えるための筋トレが、筋肉を分解してエネルギーとして消費してしまいます。
これを防ぐために必要となるのが「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」です。必須アミノ酸の一種で、筋肉の15~20%はこの分岐鎖アミノ酸で構成されています。
分岐鎖アミノ酸が筋肉の中に豊富に存在していれば、優先的にエネルギーとして消費されます。分岐鎖アミノ酸が代わりにエネルギーとして消費されることで、たんぱく質を分解せずともエネルギー源を確保できるというわけです。
筋肉が分解されるのを防ぐために必要な分岐鎖アミノ酸は肉類や魚介類、乳製品など様々な食品に含まれていますが、筋トレ前に胃を満たしておくのは理想的ではありません。
そこで役立つのがゼリータイプの機能性食品です。運動前に摂取しても問題なく、吸収率もいいことからぴったりです。
その2.筋トレ後30分以内にスポーツドリンクを飲むべし
筋トレ後には糖質も摂るよう意識しましょう。
「ダイエット中なのに糖質?」と抵抗を感じるかもしれませんが、糖質が不足すると筋肉の合成を促すインスリンの分泌が抑えられてしまいます。
また、糖質が抑えられることで脳がエネルギー不足になることも問題です。
この糖質が不足すれば脳は飢餓状態であると判断し、エネルギーの消費を抑えるよう体に命令を出します。エネルギー消費を抑えられてしまっては筋トレの効果もダウンしてしまうため、糖質を補給しましょう。
このように筋肉の合成を促し、脳にエネルギーを供給するためには、スポーツドリンクがおすすめです。また、スポーツドリンクには筋肉の素となるアミノ酸も含まれています。
その3.たんぱく質はプロテインで補うべし
筋肉をつけるには、筋肉の素となるたんぱく質が必要となります。食事からはもちろんですが、プロテインで無理なく補うことも大切です。
特に「筋トレ後30分」のゴールデンタイムに摂取するのが効果的です。
たんぱく質は普段の食事から多く摂取できる栄養素で、肉類や魚介類、大豆製品など様々な食品に含まれています。
たんぱく質の1日における最低必要量は体重の1000分の1です。つまり、体重60㎏の方であれば少なくとも60gは1日に摂取する必要があるということです。筋肉をつけるにはこの2~3倍、つまり体重60㎏の方であれば120~180gは摂取するよう意識しましょう。
食品100gあたりに含まれるたんぱく質の量を表にまとめました。この表を見てもわかるように、食品に含まれるたんぱく質というのは、それほど多くはありません。
食品 | 食品100gあたりに含まれるたんぱく質の量(g) |
肉類 | 鶏むね肉(38.8)ささ身(27.3)豚ロース(26.7)ローストビーフ(21.7) |
魚介類 | たら(28.3)ぶり(26.2)かつお(25.0)くるまえび(23.5) |
乳製品 | 牛乳(3.3)プロセスチーズ(22.7)モッツァレラチーズ(18.4)ヨーグルト(4.3) |
大豆製品 | ひきわり納豆(16.6)生湯葉(21.8)木綿豆腐(6.6)豆乳(3.6) |
卵 | ゆで卵(12.9)たまご焼き(11.2) |
※参考:文部科学省食品データベース
そのため全てを食事から賄うのは現実的ではありません。
体重60㎏の方が、120~180gのたんぱく質を毎日摂り続けるのは難しく、なにより余計な脂質やカロリーまで摂取してしまうことになります。これではダイエットになりません。そこで役立つのがプロテイン。プロテインを使うことで、カロリーを抑えながらたんぱく質を補えます。
このプロテインは前述したように「筋トレ後30分」のゴールデンタイムに摂取するのが効果的です。
筋トレ後30分というのは、トレーニングによって傷ついた筋肉を修復するために、体が栄養素を取りこんでいるタイミングです。この時にたんぱく質を摂取することで、筋肉に届きやすくなるというわけです。
消化吸収の早いプロテインパウダーであれば、この「ゴールデンタイム」を逃すことなくたんぱく質を補給できます。前述したスポーツドリンクと合わせて摂取すると良いでしょう。
その4.日頃から肉類や卵、乳製品、大豆食品を積極的に摂るべし
たんぱく質を構成するアミノ酸を食事から摂ることも大切です。
このアミノ酸がバランスよく含まれているのが牛肉、豚肉、鶏肉といった肉類です。他には卵にもバランスよくアミノ酸が含まれています。この他には魚介類や乳製品、大豆製品などにもアミノ酸は含まれています。
たんぱく質を構成するアミノ酸のうち、9種類は体内で作ることができない「必須アミノ酸」と呼ばれるものです。体内で作りだせないため食事から摂り入れる必要があります。
必須アミノ酸のほとんどが筋肉を強化したり、体の成長を促したりする働きがあるため、筋肉をつけるには欠かせません。
アミノ酸はバランスが大事
必須アミノ酸が必要だからといって、一部のアミノ酸ばかりを摂取すればいいというわけでもありません。一つのアミノ酸だけを偏って摂取したとしても意味がなく、他のアミノ酸が少なければたくさん摂った余剰分は活かされません。そのため、アミノ酸はバランスよく摂取する必要があります。
とはいえ、必要なアミノ酸がバランスよく摂れるからと肉類ばかり食べるといったことのないようにしましょう。偏った食事は栄養バランスを崩すことになるため、あくまで積極的に摂取する程度にとどめましょう。
ダイエット中に食事を意識することは大変重要ですが、なによりもバランスが大切です。関連記事を参考に無理のないダイエット用の食事メニューを考えましょう。
- 関連記事
ダイエット中の栄養管理については「ダイエット中の栄養管理の方法|「食事バランスガイド」を解説」で詳しく解説しています。是非参考にしてみてください。
その5.カルシウムをしっかりと摂るべし
筋肉がスムーズに動くようにカルシウムを摂りましょう。筋肉がスムーズに動かないことには筋トレも有酸素運動も捗りません。
カルシウムと言えば骨を形成する栄養といったイメージがあるかもしれませんが、実は筋肉を動かす「スイッチ」の役割も果たしており、体を動かすうえで欠かせない存在です。
カルシウムの一日における目標摂取量は、厚生労働省によると18~29歳女性の場合650mg、男性の場合800mgは必要です。サプリメントで補わなければならないほどハードルが高い基準ではありませんが、意識的にカルシウムを摂取するよう心がけましょう。
かたくちいわしや干しえび、ひじきなどの魚介類をよく食べるよう意識すれば十分賄えます。
年齢 | 男性 | 女性 |
18~29歳 | 800mg | 650mg |
30~49歳 | 650mg | 650mg |
50~69歳 | 700mg | 650mg |
※参考:厚生労働省発表「日本人の食事摂取基準(2015年版)概要」
ただし、カルシウムの吸収率は年齢を重ねるにつれて悪くなっていきます。そのため年齢を重ねた方ほど積極的にカルシウムを摂るよう心がけることと、いかにカルシウムの吸収率をよくするかを考える必要があります。
カルシウムの吸収率を良くするためには?
- 体を動かすこと
運動しなければせっかく摂取したカルシウムも吸収されず排出されてしまいます。
- たんぱく質を摂ること
カルシウムはたんぱく質と一緒に摂取することで吸収率が高まります。カルシウムとたんぱく質を一緒に摂れるような食べ合わせを意識しましょう。
まとめ
今回は筋トレとダイエットの関係性を紹介してきました
ここだけは押さえておきたい!ダイエット中の筋トレに関するポイント
- 筋肉がつくと基礎代謝が上がり、エネルギーを消費しやすい体になる
- 筋トレは有酸素運動の脂肪燃焼効果を助ける
- 最低でも3か月は筋トレに励む
- 筋トレで大切なのは回数よりも負荷の強さ
- フォームと呼吸を意識する
- たんぱく質とアミノ酸、カルシウムを摂取する
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