ベントオーバーローイングは、背中の筋肉を鍛えることができるトレーニングです。腕を引く動作ではありますが、腕ではなく背中の筋肉を使って引き上げます。
動作はとてもシンプルで、フォーム自体は簡単に見えますが、背中は普段意識しないため、筋肉を使う感覚がわかりづらい鍛えるのが難しい部位です。そのため正しいフォームを身につけることが大変重要です。
トレーニングで効果を出すのはもちろん、腰への負担を軽減するためにも正しいフォームを身につける必要があります。そこで今回は、ベントオーバーローイングの正しい実践方法を紹介します。
ベントオーバーローイングで鍛えられる筋肉と効果
ベントオーバーローイングで鍛えられる筋肉は3種類あります。
鍛えられる筋肉1.広背筋
広背筋は両脇腹から背中まで伸びた大きな筋肉です。主に腕で何かを引き上げたり、上半身を前後左右に倒したり、旋回させたりする時に使う筋肉です。
背中の筋肉は普段意識しないため、トレーニングしていても筋肉を使えているのか感覚的にわかりにくい部位です。正しいフォームを守ることで、効果的に鍛えましょう。
広背筋を鍛えることで背中が広く大きくなります。そのため、逆三角形の体にするためにも必要な筋肉です。
鍛えられる筋肉2.僧帽筋
憎帽筋は首から腰の少し上あたりまでに広がる大きな筋肉。主に腕を持ち上げたり、肩甲骨を安定した状態に保ったりするために使われる筋肉です。柔道などのスポーツで必要な引く力にも大きく作用します。
憎帽筋が弱くなると肩甲骨が外側へ開いてしまうため、猫背になってしまいます。正しい姿勢をキープするためにも必要な筋肉です。
鍛えることで肩から首にボリュームが出るため、広背筋と同様に逆三角形の体に必要な筋肉です。
鍛えられる筋肉3.大円筋
大円筋は肩甲骨と上腕をつなぐ筋肉で、広背筋を補助するような役目を果たす筋肉です。日常生活ではドアを手前に引いたり、水中で水をかいたりする動作に使われます。
大円筋は広背筋を補助する役割があるため、広背筋と一緒に鍛えられます。広背筋とともに逆三角形の体を形作ってくれます。
【自宅編】ベントオーバーローイングのやり方と鍛えられる部位
ベントオーバーローイングは英語で「bent over(前かがみになる)」という名の通り、基本的に前傾姿勢で行う筋トレです。バーベルだけでなく、ダンベルやチューブなどでも行えます。
バーベルより負荷が低く、自宅でも実践可能なためまずは自宅編のベントオーバーローイングから始めてみてください。
ベントオーバーローイングの種類 | 効果的な筋肉 |
チューブローイング | 広背筋、僧帽筋、大円筋 |
ダンベルベントオーバーローイング |
トレーニング中は姿勢に注意しましょう。背中が丸まってしまうと広背筋に効きにくくなります。また、腰への負担が増すため要注意です。
ベントオーバーローイングは前傾することが重要なポイントです。上半身の角度は約45度にします。あまり前傾しすぎると姿勢の維持が難しくなり、逆に起こしすぎると可動域が狭くなり負荷が弱まります。前傾する角度は35~45度の間に収めましょう。
また、トレーニングの難易度を☆の数で5段階評価します。☆の数が多いほど難しいトレーニングです。
チューブローイング(☆☆)
トレーニング用のチューブを踏んで固定し、肩甲骨を寄せるようにして背中の筋肉で引っ張ります。負荷は小さいですが、自宅で手軽にできるメリットがあります。
チューブローイングのポイントは2つあります。
1つ目は「胸を張って姿勢を良くする」ことです。背すじを真っすぐ伸ばし、床と平行になるように骨盤を前傾するイメージで行いましょう。猫背で行うと腰を痛めたり、広背筋に効きにくくなったりするため注意してください。
2つ目は「自分に合った負荷をかける」ことです。チューブはダンベルなどのウエイトと異なり、持ち手の位置によって負荷を自分で調節することができます。
チューブを短く持てば負荷がかかり、長めに持てば負荷が軽減します。自分にあった強度で効果的なトレーニングを行いましょう。
- チューブを両足でしっかりと踏んで、ヒザは少し曲げた状態で、上半身を45度ほど前傾させます。
- 背すじを伸ばしたままヒジを後ろに引き、チューブをお腹の方へ引き上げます。
- 肩甲骨がしっかり引き寄せられてることを意識しましょう。
- チューブを引き切ったら、ゆっくりと張力に逆らいながら下ろしましょう。
◆回数の目安:8~10回×3セット
ダンベルベントオーバーローイング(☆☆☆)
前傾姿勢で両手にダンベルを持って上げ下げします。
ダンベルベントオーバーローイングのポイントは2つあります。
1つ目は「肩甲骨を寄せて胸を張る」ことです。ダンベルは腕の力ではなく、背中の筋肉で引き上げます。そのためには肩甲骨を寄せるイメージで、胸を張ることを意識しましょう。
2つ目は「脇を閉める」ことです。ダンベルを引き上げる際に脇が開きやすくなるため、閉じるよう注意しましょう。脇が開いてしまうと肩の三角筋へ負荷が逃げてしまいます。
- ダンベルを両手に持ち、足は腰幅ぐらいに開きます。
- 背すじを伸ばし、お尻をしっかりと引き、45度ほど前傾します。
- 姿勢を保ったまま、肩甲骨を寄せるようにしてダンベルを引き上げます。
- 胸ではなく、ダンベルをおへそに向かって引き上げましょう。
- ゆっくりと重力に逆らうように下ろしていきます。
◆回数の目安:10~12回×3セット
【ジム編】ベントオーバーローイングのやり方と鍛えられる部位
自宅でのトレーニングに慣れたら、ジムでバーベルを用いた高負荷のトレーニングを行いましょう。バーベルを使うことで腰への負担が増すため、よりフォームの重要性が増します。
ベントオーバーローイングの種類 | 効果的な筋肉 |
ベントオーバーローイング | 広背筋、僧帽筋、大円筋 |
シーテッドローイング | |
Tバーローイング |
ベントオーバーローイング(☆☆☆☆)
バーベルを上げ下げする種目で、単にベントオーバーローイングと言った際にはこのバーベルを使っての筋トレを指します。
ベントオーバーローイングのポイントは2つあります。
1つ目は「背中はまっすぐをキープする」ことです。胸を張ることで、自然と肩甲骨を寄せやすくなり広背筋や僧帽筋に効かせやすくなります。背中が丸くなり、腰へ負担がかかることのないよう注意しましょう。
2つ目は「下腹部に向かってバーベルを引く」ことです。そうすることで広背筋が動きやすくなり、腕の動きも抑えられるため効果的です。
- 背すじをまっすぐにして45度ほど前傾し、バーベルを持ちます。
- 胸を張った状態をキープしながら、肩甲骨を寄せてバーベルを引き上げます。
- この時、バーベルを上げるのではなく、ヒジを上げるような意識でやると広背筋に効かせやすくなります。
- バーベルが腹部に触れたら、ゆっくりと下げます。
◆回数の目安:8~10回×3セット
シーテッドローイング(☆☆☆)
マシンを使っての種目です。マシンを使うことで軌道が限定されるため、自然と広背筋を使う感覚を掴めるメリットがあります。
シーテッドローイングのポイントは2つあります。
1つ目は「背すじを伸ばす」ことです。座って行いますが、猫背にならないよう気を付けてください。他の種目と同様に背中が丸くなると広背筋に効きません。姿勢をキープすることを意識しましょう。
2つ目は「足で踏ん張らない」ことです。足を踏ん張ってしまうと、下半身の力を使うことになります。背中への負荷が弱まるため、足は置くだけで踏ん張らないようにしましょう。
- フットプレートに両足を置き、ヒザが少し曲がる位置からスタートします。
- 背すじを伸ばした状態で、両手を使ってグリップを下腹部へ引きます。
- 腕を引く時、上体が後ろへ倒れないように注意しましょう。
◆回数の目安:左右10~12回×3セット
Tバーローイング(☆☆☆☆)
バーベルの片方だけにウエイトをつけて、引き上げるトレーニングです。
Tバーローイングのポイントは2つあります。
1つ目は「バーの片方を確実に固定する」ことです。Tバーローイング用のマシンがない場合はバーベルで代用します。その際はバーベルの片方だけにウエイトをつけて持ち上げるため、反対側が浮いてしまう恐れがあります。
バーのウエイトをつけていない方を壁につけたり、ウエイトを乗せて固定したりして動かないよう工夫しましょう。その際はジムに迷惑をかけない範囲で行いましょう。
2つ目は「真上に引き上げない」ことです。フリーウエイトとは違い固定されているため、真上に引くとバーの位置が前へズレてしまいます。
引き上げる軌道は固定された部分を支点にして、円運動させるように意識しましょう。
- バーをまたぎ肩幅に両足を平げて、上半身がぐらつかない位置で立ちます。
- 背すじは伸ばしたまま、45度ほど前傾します。Vハンドルをバーに引っかけて持ち手にしましょう。
- 肩甲骨を寄せながら、円の軌道に合わせて引き上げます。
- ゆっくりと下ろしていきましょう。
- Vハンドルを使って行わない場合は、手が一直線上に並ぶため、前にくる手を交互に入れ替えて行います。
◆回数の目安:左右5~8回×3セット
ベントオーバーローイングの初心者は20kg程度の重量から始める
ダンベルにしろ、バーベルにしろ、まずは自分が扱いやすい軽い重量から始めるべきです。ベントオーバーローイングは背中の大きな筋肉を使うため、高重量でも行えます。
しかし、高重量を引き上げるよりも大事なのはフォームを守ること。背中の筋肉は意識しにくいため、フォームを身につけて効かせる感覚を覚えることがとても大切です。
フォームを覚えて腕ではなく、背中で引き上げられるようになってから重量を上げていきましょう。バーベルであれば初めはウエイトをつけずバーのみで実施するのもおすすめです。
重量の目安としては20~30kg程度までの軽いウエイトで始めましょう。
ベントオーバーローイングで腰を痛めないためのコツ
前傾姿勢でウエイトを扱うため、腰を痛めやすいトレーニングです。腰への負担をやわらげるため以下のコツを押さえておきましょう。
- 胸を張って背すじを伸ばす
背中が丸くなると腰への負担が増します。常に胸を張って背すじを伸ばしたままトレーニングしましょう。胸を張って肩甲骨を寄せることを意識すると姿勢を保ちやすくなります。
- 扱いやすい重量のウエイトを使う
高重量になるとフォームが乱れやすくなります。フォームは十分な効果を引き出すためにも重要ですが、腰への負担を避けるためにも重要です。
「ベントオーバーローイング」と「デッドリフト」の違いと順番
ベントオーバーローイングと同様に背中を鍛えられる種目として「デッドリフト」があります。
ベントオーバーローイングは前傾姿勢のまま上げ下げしますが、デッドリフトは上半身を起こす力も利用してバーベルを持ち上げます。
デッドリフトでは上半身を起こす際に股関節を動かすため、太ももやお尻など下半身の筋肉も刺激することとなります。また、背中の筋肉で姿勢を維持する脊柱起立筋に効果があるのも特徴です。
トレーニングの種類 | 動作 | 姿勢 | 効果的な筋肉 |
ベントオーバーローイング | 腕を引く | 前傾姿勢のまま | 広背筋、僧帽筋 |
デッドリフト | 上半身を起こして持ち上げる | 前傾姿勢から起き上がる | 脊柱起立筋、広背筋、下半身の筋肉 |
下半身の筋肉も使う分、ベントオーバーローイングよりもデッドリフトの方が広範囲の筋肉を使用します。
そのためトレーニングの順番としてはデッドリフトを先に行うべきでしょう。全身の筋肉を広く使うデッドリフトは疲労が溜まった状態では実施することが難しくなるからです。
ただし、ベントオーバーローイングもデッドリフトも腰に大きな負担がかかるトレーニングです。連続して行うのは避けましょう。
デッドリフトはこちらの「「デッドリフト」で下半身を満遍なく強化!その種類と効果を解説」で詳しく解説しているため、実践される場合はぜひ参考にしてみてください。
まとめ
今回は、広背筋など背中の筋肉を鍛える「ベントオーバーローイング」を紹介しました。
ここだけは押さえておきたい!ベントオーバーローイングのポイント
- 45度ほど角度をつけて前傾する
- 背すじをまっすぐに背中を丸めない
- 脇を開かない
- 肩甲骨を寄せるように引き上げる
- 肩をすくめない
広背筋や僧帽筋など背中の筋肉を鍛えることで逆三角形の体を目指すことができます。ついつい目につきやすい腹筋や腕の筋肉などを優先しがちですが、背中の筋肉もバランスよく鍛えてこそ魅力的な体が作れます。
とは言え、普段意識しない背中の筋肉を鍛えるのは意外と難しいものです。「肩甲骨を寄せる感覚がよくわからない」、「本当に効いているのか実感できない」といった方もいらっしゃることでしょう。
最初のうちに正しいトレーニングフォームを身につけることが、もっとも効果がでる最短の方法です。こまめにチェックすることを心掛けましょう。
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