腕を太く鍛え上げるためにダンベルを使ったトレーニングに取り組もうと考えている方は多いことでしょう。腕を太くするためには肩からヒジまでの「二の腕」とヒジから手首までの「前腕」をバランスよく鍛えることが重要です。
ただし、腕には複数の筋肉が走っていることから、筋肉ごとに種目を変えてトレーニングする必要があります。そのためには、それぞれの筋肉が付いている位置や働きをしっかりと把握しなければなりません。
そこで今回は「前腕」にフォーカスし、前腕を太くするために鍛えるべき筋肉と、ダンベルを使う効果的な筋トレ種目を紹介します。
前腕を太くするために鍛えるべき筋肉の位置と働き
前腕を太くするためには以下で紹介する2つの筋肉を鍛えるとよいでしょう。
前腕筋群(ぜんわんきんぐん)
ヒジから手首までの前腕には小さな筋肉がたくさん走っており、ヒジから指先までついている筋肉を総称して「前腕筋群」と呼ばれます。
前腕筋群は20以上の筋肉により構成されますが、主に「前腕屈筋群」と「前腕伸筋群」の2つに分類されます。
2つを分けるのは「筋肉の使われ方」。前腕屈筋群は「手のひらを上に向けた状態で手首を曲げる」時と「前ならえの状態から手のひらを下に向ける」時に使われ、一方で前腕伸筋群は「手の甲を上に向けた状態で手首を反らす」時と「前ならえに状態から手のひらを上に向ける」時に使われます。
前腕筋群の構成
筋群 | 主な位置 | 働き |
前腕屈筋群 | 手のひらを天井に向けたときに前腕の上についている |
|
前腕伸筋群 | 手の甲を天井に向けたときに前腕のに上についている |
|
腕橈骨筋(わんとうこつきん)
腕橈骨筋はヒジ関節から手首まで伸びている筋肉です。手首の関節はまたいでいないため、手首の動きには関与していません。
主に上腕二頭筋のサポート役として「ヒジを曲げる」時に使われますが、ビールをジョッキで飲むときのように親指を上に向けてヒジを曲げる動作では上腕二頭筋よりも強く働きます。
前腕を太くするなら押さえておきたい!前腕の筋肉の働き
- 前腕屈筋群:「手のひらを上に向けた状態で手首を曲げる」「前ならえの状態から手のひらを下に向ける」時に使われる
- 前腕伸筋群:「手の甲を上に向けた状態で手首を反らす」「前ならえに状態から手のひらを上に向ける」時に使われる
- 腕橈骨筋:親指を上に向けてヒジを曲げる時に使われる
前腕を太くするために効果的なダンベルを使った筋トレ種目
ここからは、「前腕を太くしたい!」という方におすすめのダンベルを使った筋トレ種目を紹介します。
また、トレーニングの難易度を☆の数で5段階評価しています。☆の数が多いほどトレーニングの難易度は上がります。
プロネーション(☆)
プロネーションはヒジの位置を固定した状態でダンベルを縦に握り、体の内側に向かって、体とダンベルが平行になるまで倒す筋トレ種目です。メインのターゲットは前腕屈筋群になります。
※動画で「スピネーション」と表記されていますが、プロネーションの誤りです。
- ベンチや椅子に座り、片手でダンベルを縦に握ります。この時、ダンベルの下の部分を握ってください。
- 反対の手でダンベルを持っているほうのヒジをしっかりと押さえます。
- ダンベルと床が平行になるまで、体の内側に向かって手首をひねります。ダンベルを倒したり立てたりする動作を繰り返します。
◆回数の目安:20回を3セット
プロネーションでは前腕屈筋群の収縮に意識を向けてください。また、同様に手首以外が動かないようにヒジの位置をしっかりと固定しましょう。
スピネーション(☆)
※動画で「プロネーション」と表記されていますが、スピネーションの誤りです。
スピネーションはヒジの位置を固定した状態でダンベルを縦に握り、体の外側に向かって、体とダンベルが平行になるまで倒す筋トレ種目です。メインのターゲットは前腕伸筋群になります。
- ベンチや椅子に座り、片手でダンベルを縦に握ります。この時、ダンベルの下の部分を握りましょう。
- 反対の手でダンベルを持っているほうのヒジをしっかりと支えます。
- ダンベルと床が平行になるまで、体の外側に向かって手首をひねります。ダンベルを倒したり立てたりする動作を繰り返します。
◆回数の目安:20回を3セット
ポイントは前腕伸筋群が収縮されているかどうか、しっかりと意識すること。肩や二の腕の筋肉が使われないようにヒジの位置はしっかりと固定しましょう。
ダンベル・ハンマーカール(☆☆)
ダンベル・ハンマーカールはダンベルを体の横で縦に持って行う筋トレ種目です。ダンベルを握る際に親指が上を向くようにすることが特徴で、メインのターゲットは腕橈骨筋になります。
- ダンベルを持ち、足を肩幅に開いて立ちます。この時、手は体に沿って下ろします。
- ヒジと二の腕の位置を固定した状態で、ヒジを曲げ伸ばしてダンベルを上げ下げします。
◆回数の目安:20回を3セット
トレーニングのポイントは、ヒジを動かさないようにすること。ヒジが前後にブレてしまうと、肩の筋肉が使われてしまいます。腕橈骨筋に効果的に効かせるためにヒジの位置は固定するようにしてください。
前腕の筋肥大に適した負荷とトレーニング回数
前腕の筋トレを行う際の負荷は「1RMの65%」(20回程度こなせる重量)が目安となります。また、セット数は少なくとも3セットはこなす必要があるでしょう。
筋トレの負荷の大きさを表す「RM」とは
筋トレでは負荷の大きさを表す単位として「RM」という単位が用いられます。RMは「レペティション・マキシム(repetition maximum)」の略語です。「repetition」は「リピート(繰り返し)」を意味し、「maximum」は「最大数」を意味するため、トレーニングにおいてRMは「最大反復回数」と訳されます。
つまり、1RMは1回しか上げることのできない重さを示すということです。また、例えば1RMが100kgの人にとって、1RMの65%は65kgということになります
100kgを1回しか上げられない人にとっての65%1RMのは65kgということになります。
前腕の筋肥大に適した負荷の大きさは「1RMの65%」
一般的に、筋肥大させるためには「1RMの65%」〜「1RMの85%」程度の負荷で、「これ以上はもう上がらない」あるいはそれに近い回数まで繰り返し、それを3セット以上こなす必要があると言われています。
1RMの65%というのは筋肥大させるための最低ラインで、比較的低負荷です。ただし、前腕の筋トレは「1RMの65%」くらいがちょうどよいでしょう。前腕の筋トレは低負荷で行なった方がよい理由は2つあります。
1つ目の理由は「前腕は遅筋線維の割合が多いから」。
筋肉は筋繊維から構成されていますが、その筋繊維は主に「速筋線維」と「遅筋線維」の2つに大別されます。
速筋線維と遅筋線維
遅筋線維は筋繊維の一種です。筋繊維は「速筋線維」と「遅筋線維」の2種類に大別されます。
速筋線維:瞬間的に出せるパワーは大きいが、持久力に欠ける
遅筋線維:パワーは小さいが持久力がある
前腕は「遅筋線維の割合が多い」という特徴を活かして、小さい負荷で長くトレーニングを行う(回数を多く重ねる)のが適しています。
2つ目の理由は「前腕の筋肉には体積の小さな筋肉が多いから」。
前腕は体積の小さな筋肉が多く集まって成り立っていることから、あまりにも大きな負荷を与えてしまうと、筋繊維が必要以上に損傷されてしまう恐れがあります。小さい筋肉を適度に損傷させるためには「1RMの65%」くらいの低負荷が効果的です。
前腕の筋肥大に適したトレーニングの回数は1セット20回前後×3セット
前腕のトレーニングの回数の目安は1セットあたり20回前後です。さらにセット数は、3セット以上行うのが効果的でしょう。
なぜ「20回」かと言うと、「1RMの65%」は「20回程度こなせる重量」に相当すると言われているからです。自分にとっての「1RMの65%」がどれくらいの重量なのか判断がつかない方も多いことでしょうから、回数から逆算して重量を調節するとよいかもしれません。
前腕の筋肥大に適したトレーニングの頻度
前腕の筋トレは2日に1度の頻度で行うのがおすすめです。というのも筋肉が肥大化するためには、筋肉をしっかりと休ませてあげる必要があるからです。
筋肉が肥大化するということは、筋繊維1本1本が太くなるということ。筋繊維は損傷し、それを修復する過程を経て太くなっていきます。
腕の筋繊維の修復にはだいたい48時間かかるとされているため、トレーニングは2日に1度がちょうどよいと言えます。
まとめ
今回は前腕を鍛えるダンベルを使った筋トレ種目を紹介しました。
前腕を太くするために鍛えるべき筋肉 | 効果的なトレーニング |
前腕屈筋群 | プロネーション |
前腕伸筋群 | スピネーション |
腕橈骨筋 | ダンベル・ハンマーカール |
また、以下に前腕の筋トレをする上で押さえておきたいポイントをまとめましたので、復習しましょう。
前腕の筋トレをするときに押さえておきたいポイント
- 筋肉ごとに働きが違うため、筋トレ種目を変えて鍛え分ける必要がある
- 肩や二の腕の筋肉の関与を抑えるためにヒジの位置を固定すること
- 負荷の目安は「1RMの65%」(20回程度こなせる重量)
- セット数は3セット以上
- トレーニングの頻度は2日に1度
ダンベルを使ったトレーニングは重量設定が重要になってきます。この記事では1日おきに「1RMの65%」(20回程度こなせる重量)のトレーニングを3セット以上行うのが効果的と説明していますが、これはあくまでも一般論で、実際には個人差があります。
自分にとってちょうどよい負荷の大きさやトレーニングの頻度を設定して取り組んでいきましょう。
- 石井直方著「筋肉まるわかり大辞典」
※「前腕の筋肥大に適した負荷とトレーニング回数」と「前腕の筋肥大に適したトレーニングの頻度」の箇所
コメント