チンニングは一般的に「懸垂」として知られているトレーニングですが、「バーの高さまであごを上げる」という意味の英語「chin up」に由来する形で「チンニング」と呼ばれています。
チンニングは主に背筋のトレーニングに効果的ですが、実は数多くの種類があり、バーの握り方や手の幅によって鍛えられる部位が異なってきます。
目的の筋肉を的確に鍛えるために、今回はチンニングの「種類」と「鍛えられる部位」、さらにはバーの握り方や手の幅など「フォーム」について紹介していきます。
チンニング(懸垂)で鍛えられる部位と効果
チンニングで鍛えられる筋肉は大きくわけて4つあり、主に背筋をメインに鍛える筋トレになっています。
鍛えられる筋肉1.広背筋(こうはいきん)
広背筋は肩甲骨下にある背中で最大の筋肉で、肩関節・腕を動かすために使われる筋肉です。物を手前に引き寄せるような動作に使われます。
チンニングにおいては、腕の力だけではなく背筋を意識することで効果的に鍛えられます。この広背筋を発達させることで、逆三角形の魅力的なボディを作ることができます。
鍛えられる筋肉2.大円筋
腋の下あたりにあり、広背筋をサポートするように一緒に動くことが多い筋肉のため、広背筋のサブとして補助的に鍛えると効果的です。
大円筋を鍛えれば脇の下が膨らんで見えるため、上半身の逆三角形がより引き立ちます。
鍛えられる筋肉3.僧帽筋(そうぼうきん)
僧帽筋は細かく分けると「上部・中部・下部」という3つに分けられ、首の付け根から肩そして背中まで広範囲に広がる筋肉です。日常生活では腕を持ち上げたりする動作に使われています。
バーを使ってチンニングをすることで「僧帽筋下部」が鍛えられます。僧帽筋が衰えると肩こりや猫背になると言われているため、僧帽筋を鍛えることで姿勢が良くなるというメリットもあります。
鍛えられる筋肉4.上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)
上腕二頭筋は腕の力こぶができる部分で、太くたくましい腕の象徴とも言える部分です。チンニングは主に背筋を鍛えるための筋トレですが、鍛え方によっては上腕二頭筋も鍛えることができます。
通常のバーの握り方ではなく、逆手でバーを握ることにより背筋の負荷が減り、上腕二頭筋への負荷が大きくなるので効果的に鍛えることができます。
上腕二頭筋は二の腕に「こぶ」を作る筋肉のため、鍛え上げれば力こぶが盛り上がり、たくましい腕になるでしょう。
鍛えられる筋肉5.三角筋後部(さんかくきんこうぶ)
三角筋は肩にある体積の大きな筋肉のため、前部・中部・後部によって鍛え分ける必要がありますが、チンニングでは特に背中側にある「三角筋後部」を鍛えられます。
三角筋は肩の丸みを作っており、鍛えることで肩幅を広くできます。バランスのいい肩の丸みを作るために三角筋後部もしっかり鍛えましょう。
チンニングの種類とそれぞれのフォーム
チンニングには多くの種類があります。そこでチンニングの種類とそれぞれが効く部位について解説します。
種類 | メインで効く部位 |
オーバーグリップ・チンニング(順手懸垂) | 広背筋、大円筋 |
アンダーグリップ・チンニング(逆手懸垂) | 広背筋、上腕二頭筋 |
ワイドグリップ・チンニング | 広背筋、僧帽筋 |
ナローグリップ・チンニング | 広背筋上部、三角筋後部、僧帽筋 |
ネガティブ・チンニング | 広背筋、僧帽筋 |
ビハインドネック・チンニング | 大円筋 |
チンニングはバーの持ち方や幅によって負荷がかかる筋肉が異なるため、自分がメインに鍛えたい筋肉によってフォームを変える必要があるでしょう。また、狙った筋肉に効いているかどうか確認することも大事です。
また、目安の回数を紹介していますが、あくまでも目安のため、無理に多くの回数をこなす必要はありません。自分ができる範囲で正しいフォームを維持しつつ、1回1回を丁寧にこなしてください。
なお、トレーニングの難易度を☆の数で5段階評価します。(☆の数が多いほど難しいトレーニングになります。)
オーバーグリップ・チンニング(順手懸垂)(☆☆☆)
オーバーグリップ・チンニングは順手で(上からバーを握って)行うチンニングで、メインのターゲットとなるのは「広背筋」と「大円筋」です。
これが基本型となり、ここから持ち方や幅を変えることでバリエーションが生まれます。
オーバーグリップ・チンニングのコツは2つあります。
1つ目はバーを引き付けるのではなく、ヒジを腰にぶつけるような意識で動作をおこなうこと。こうすることで、腕の力ではなく、肩や背中の筋肉を効果的に使えます。
2つ目は胸をバーに近づけること。胸が張れていないと背中の筋肉が使われないため、広背筋のトレーニングにはなりません。しっかり胸を張るように意識してください。
- 小指側を強く握り、肩幅より拳1つ分くらい広めにしてバーにぶら下がります。
- 上向きで胸を張り、肩甲骨を引き寄せるようにして体を引き上げます。
- 引き上げたら少し停止し、その後ゆっくり戻しましょう。
◆回数の目安:8回×3セット
アンダーグリップ・チンニング(逆手懸垂)(☆☆☆☆)
アンダーグリップ・チンニングは逆手で(下からバーを握って)行うチンニングで、メインのターゲットとなるのは「広背筋」と「上腕二頭筋」です。逆手で握ることで、背中だけではなく腕の筋トレにもなります。
アンダーグリップ・チンニングのコツは背中を丸めないこと。チンニングをする際には、背中を丸めないことが広背筋を効果的に鍛える上で重要になります。
- 手の幅を肩幅より拳1つ分くらい広めにして、逆手でバーを握ります。
- 両腕を伸ばし、バーにぶら下がりましょう。
- 息を吐きながらアゴがバーの上にくるまで引き上げます。(反動は使わない。)
- ゆっくりと体を戻していきます。
ワイドグリップ・チンニング(☆☆☆)
ワイドグリップ・チンニングは順手でかつ肩幅の2倍程度の手の幅でバーを握って行います。メインのターゲットとなるのは「広背筋」と「僧帽筋」で、背中の筋トレに効果的なのがワイドグリップ・チンニングです。
ワイドグリップ・チンニングのコツは「手をバーに引っ掛ける」意識でバーを握ること。こうすることで、腕の筋肉が使われることを抑制し、背中の筋肉を効果的に使えます。
- 順手でバーを握ります。手の幅は肩幅の2倍程度に広げた状態です。
- バーに胸を引きつけるようなイメージで引き上げましょう。反動は使わずフォームを意識してください。
- ゆっくりと体を戻します。腕はキチンと下までおろしましょう。
◆回数の目安:まずは10回を目指しましょう。
ナローグリップ・チンニング(☆☆☆☆)
ナローグリップ・チンニングは順手でかつ手の幅を肩幅よりも狭くしてバーを握って行うチンニングです。基本のチンニングよりも背筋の可動域が広くなることから、広背筋上部や三角筋後部、僧帽筋がメインのターゲットとなります。
ナローグリップ・チンニングのコツはヒジを伸ばし切る直前まで体を落とすこと。こうすることで、背筋を目一杯ストレッチさせることができます。
ただし、ヒジを完全に伸ばし切ってしまうと筋肉の緊張状態が緩んでしまうため、ヒジが伸び切る直前でストップさせましょう。
- 肩幅より狭い手の幅でバーを握りぶら下がります。
- 肩甲骨を寄せながら体を引き上げていきましょう。
◆回数の目安:まずは10回を目指しましょう。
ネガティブ・チンニング(☆☆☆)
ネガティブ・チンニングはゆっくりと下ろすチンニング。この「ネガティブ」というのは筋肉を伸ばすことを意味しています。筋肉は縮むときより伸びるときにダメージを負うものなので、ゆっくりと伸ばすネガティブ・チンニングは筋肥大に効果的な方法です。チンニングの場合であれば、腕を伸ばす動きがネガティブ動作になります。
ネガティブ・チンニングのコツはゆっくりと下ろすこと。上がり切った地点から時間をかけて下ろす(筋肉を伸ばす)ことで、筋肉にはずっと負荷がかかることになります。5秒~10秒ほどかけてゆっくりゆっくり下ろしていきましょう。
- 肩幅より拳1つ分くらい広めにしてバーにぶら下がります。
- 上向きで胸を張り、肩甲骨を引き寄せるようにして体を引き上げます。
- 引き上げたら少し停止し、その後スローペースでゆっくりと下ろします。
◆時間の目安:5秒~10秒
ビハインドネック・チンニング(☆☆☆☆☆)
ビハインドネック・チンニングは首の後ろにバーを引き寄せるようにして行うチンニングで、「大円筋」を効果的に鍛えるトレーニングになります。
ビハインドネック・チンニングのコツは背中を少し丸めること。こうすることで、大円筋に集中的に負荷を与えられます。
ただし、ビハインドネック・チンニングは肩関節の柔軟性が必要な筋トレであるため、初心者や肩関節の固い方が行うと肩を痛める可能性があります。難易度が大変高いため、ジムのトレーナーやパーソナルトレーナーの指導の下で行ってください。
※ビハインドネックチンニングは動画の1:05秒からです。
- 肩幅より広めの間隔をあけて、バーを握りぶら下がります。
- 腕を伸ばしてヒジを軽く曲げた状態で保持します。
- 肩甲骨を寄せながら体を引き上げていきましょう。
- バーに首の後ろがつくあたりまできたらスタートポジションに戻ります。
◆回数の目安:まずは10回を目指しましょう。
チンニングができない場合におすすめのトレーニング
チンニングは効果の高い背中のトレーニングですが、難易度が高く、筋トレ初心者の方はチンニングができない場合があります。
その場合、負荷を落としたチンニングで、まずはチンニングに必要な筋肉をつけるようにしましょう。以下ではチンニングができない場合におすすめの、負荷を落としたチンニングを紹介しています。
斜め懸垂
斜め懸垂は、地面に足をつき、体を斜めにした状態で行うチンニングです。足の力を使えるため、通常のチンニングより負荷が下がり、初心者にもおすすめです。
斜め懸垂のコツは胸を張ること。胸を張ることで、背中の力で体を引く意識をもちやすくなります。
斜め懸垂の強度を上げたい場合は「足を鉄棒から離れた位置に置く」「片足を浮かせる」などの方法があります。動きに慣れたら徐々に強度を上げるようにしてください。
ラットプルダウン
ラットプルダウンは、チンニングの動きに近いマシントレーニングです。
ラットプルダウンはマシントレーニングであるため、自由に重量が調整でき、初心者でも効果的にトレーニングができます。目安としてラットプルダウンで「自分の体重×0.8」の重さを扱えるとチンニングもできるようになります。
- 関連記事
ラットプルダウンについて詳しくは「背中に効く筋トレ「ラットプルダウン」のフォーム別のやり方とコツを紹介」の記事で詳しく紹介しています。
反動をつけたチンニング
反動で体の勢いをつけると、静止した状態でのチンニングより負荷を下げられます。
反動をつけたチンニングは、チンニングの動きを体に慣れさせるためにも有効です。
しかし、本来なら筋トレの際は反動をつけるこべきてはありません。あくまで、反動は動きの補助であるため、慣れたら徐々に反動を少なくしてください。
体を下ろすだけのチンニング
先ほどの「ネガティブ・チンニング」でも説明しましたが、チンニングは体を下ろす際に筋肥大の効果が高くなります。
そのため、体を上げた状態からスタートし、ゆっくり体を下ろすだけでも十分効果があります。
「台や反動を使って体を上げる→ゆっくり体を下ろす」この動作を繰り返すことで、背中をしっかり鍛えられます。
まとめ
今回は様々な種類のチンニングを紹介しました。
これだけは押さえておきたいチンニングのポイント!
- バーの握り方やバーを握る手の幅によって種類が異なる
- 順手で握ると「広背筋」に効く
- 逆手で握ると「上腕二頭筋」に効く
- 手の幅を肩幅よりも広くすると「広背筋」に効く
- 手の幅を肩幅よりも狭くすると「三角筋後部」や「僧帽筋」に効く
- ゆっくりと下ろすと筋肥大に効果的
- 腕の筋肉ではなく、背中の筋肉を使うこと
チンニングは背筋を鍛えるのに大変効果的なトレーニングですが、難易度が高いトレーニングになります。先ほども紹介しましたが、背筋を鍛える筋トレとして「ラットプルダウン」があるため、初心者はまずラットプルダウンから始めてみても良いでしょう。
コメント